“自分の足が認めてくれる”感覚

日本のスポーツ界において「絶対王者」と呼ばれる孤高のチームがある。バスケットボール女子日本リーグ(WJBL)所属のJX-ENEOSサンフラワーズだ。WJBL 20回(2008-09シーズンから9連覇中)、全日本総合選手権21回の優勝など、その輝かしい成績は誰もが認めるトップチームの証である。


そんな日本女子バスケットボール界の女王には、中心選手の一人として絶大な信頼を寄せるスタープレイヤーが存在する。背番号10、渡嘉敷来夢選手だ。

渡嘉敷来夢選手

渡嘉敷選手は身長193cmという恵まれた体格の持ち主でありながら、高さと強さだけでなくスピードも併せ持った正真正銘のエース。JX-ENEOSサンフラワーズの一員でありながら、2015年からはWJBLのシーズンオフを利用してアメリカのWNBAシアトルストームにも所属している。そんな日米のコートを横断して活躍する渡嘉敷選手の足元をサポートするのが、アシックスのバスケットボールシューズだ。理想のバッシュについて「自分の足が認めてくれるシューズ」と切り出してくれた渡嘉敷選手、その独特な表現について次のように答えてくれた。


「あまり靴を履いていないような足との一体感を重要視していますね。どれだけ自分が靴を履いている感覚を無くせるかが大事だと思っていて。だから、それって“足が認めてくれる”ってことなんですよ」

渡嘉敷来夢選手のアシックスのバスケットボールシューズ

自らの体の一部のように違和感のないシューズは、高いパフォーマンスを発揮するだけでなく、怪我の予防にも繋がっているという。怪我をしないという意識は日々のトレーニングにおいて、もっとも重要視していることでもある。


「体の大きさ or 筋量を維持してスピードが落ちるのではなく、体の大きさ or 筋量を維持しながらスピードも高めていくフィジカル作りを意識していますね。強さもスピードも追求していきたいので。トレーニングも大事ですけど、体づくりには睡眠や食事も影響してくるので、その辺りも意識しています。自分は人よりも大きいので、食事にプロテインやサプリメントを摂取して補っていますね」

やるしかないって何でもできる。それだけバスケットボールが好き

渡嘉敷選手が意識している体づくりを一言で表すならば、「世界レベルの選手と戦うための体づくり」だ。その意識は日本代表として各国のプレーヤーと戦うなかで芽生えてきたものだが、2015年から挑戦しているWNBAの舞台を経験したことで、さらに高まってきている。


「自分が193cmとはいえ、やっぱり日本代表とWNBAでは体格差がある環境でプレーしていますからね。今は徐々にその差が埋まってきている実感はありますけど、まだまだ足りないと思う部分もあって。どれだけ近づけるのかを日々考えています」


WNBAでの経験は敢えて言葉にはしない。日々の試合と練習のなかでプレーを通じてチームメイトへ伝えるようにしている。


「まったく喋らないわけではなく、聞かれたら答えますよ。でも、口だけでは信頼は得られないと思うので、しっかりとプレーで表していきたいんです」

渡嘉敷来夢選手

WJBLのシーズンが終わるとWNBAへ。シアトルストームでのシーズンが終われば、また帰国してJX-ENEOSサンフラワーズと、ここ最近の渡嘉敷選手は1年間バスケ漬けの生活を送っている。日本とアメリカを行き来し、しかも異なる環境でプレーし続けるというのは、当然のことながら自身に変化をもたらした。


「WJBLとWNBA、それぞれのリーグにアジャストするのに1ヵ月くらい必要なんですよ。どちらかというと、アメリカから日本にアジャストする方が時間がかかりますね。アメリカではプレータイムが落ちてきてしまっているので、日本でゲーム感覚を取り戻すためには1ヵ月ほどかけてコンディションが上がってくるなと感じています。逆に、日本からアメリカへ行く時はシーズンが終わって少し休みを挟んでからなので、そこまで調整の問題がないんです」


ハードな1年を送るなかで、ときには体と心を休めるための休憩が欲しくなる。しかし、「自分が必要とされていると感じると、やるしかないって何でもできますね。それだけバスケットボールが好きなので」と、その言葉にはバスケ愛と、渡嘉敷選手のコート上の愛称であるTAKU(由来:たくましいプレーヤーになる)のように頼もしさが滲み出ている。

エースであるためにはチームを勝たせないといけない

WJBL 2017-2018シーズンにおいて、JX-ENEOSサンフラワーズは定位置である1位をキープ。2018年1月5日には、第84回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会のファイナルラウンドが開催されるので、ぜひ試合会場のさいたまスーパーアリーナまで、絶対王者の活躍を観戦するために足を運んでいただきたい。自身にとってのバスケットボールの醍醐味について、渡嘉敷選手は迷うことなく答えてくれた。


「一人がどれだけ上手くてもやっぱり勝つことって難しいんです。コート上の5人のレベルが平均的な方が勝てると思う。そういう中で5人が協力しあうところがすごく魅力的というか。あとは駆け引きが面白いですね。対戦相手がいてこその自分のパフォーマンスという部分もあるので。試合中、自分の思うようにいかない場面もあって、そこで生じる駆け引きが上手くいった時の快感はなんとも言えない快感がありますね。自分の得意プレーを相手は知っていてディフェンスするんですけど、敢えてその読まれている得意なプレーで相手の想像を超えてみたりして。それが決まったときは最高ですね」

渡嘉敷来夢選手

絶対的なエースが存在しても、それだけでは勝つことはできない。そんな教訓でもあり醍醐味を教えてくれたのは、桜花学園高校時代の恩師・井上眞一監督だった。


「井上先生に“エースであるためにはチームを勝たせないといけない”と言われ続けて、高校時代にものすごくプレッシャーをかけられたというか。当時から自分はメディアにも取り上げていただいていたけど、チームが負けてしまった時に、“どんなにお前がすごい選手だと騒がれても、チームを勝利に導けないならスーパースターでもなんでもない”と言われたんです。それからこの考えが強くなったなと思います。今でも1試合で30点を記録したとしても、チームが負けてしまえば責任を感じてしまいますし、そのたびに井上先生の言葉が出てきますね。逆に、足を引っ張れないという気持ちも上手くなる理由のひとつなんです」


恩師の言葉はWNBAの舞台でも再確認した。2016年に行われたWNBAファイナル、ロサンゼルススパークス対ミネソタリンクス戦を観戦したときのことだった。


「優勝したスパークスはスターター5人のうち4人が超スーパースターなんですよ。2015年はファイナルには進めなかったんですけど、2016年シーズンにはその超スーパースターの影に隠れてしまっていた一人が3ポイントシュートを手に入れたことで、どこにも隙が見当たらないチームになったんです。その選手は1年間でまったく違う選手になっていましたし、年齢も30近いのに成長していて、とても刺激をもらいました。そういう選手がいる以上、自分ももっと上手くなれるはずだって」


さらなる高みを目指す渡嘉敷選手。JX-ENEOSサンフラワーズの一員としてはリーグ10連覇への大きな期待がかかるが、日本代表としては早くも2020年東京オリンピックで結果を残すことを見据えている。


「東京オリンピックでは金メダルを。これから3年はフィジカルもメンタルも、そこをピークに持っていきます。オリンピックで結果を出して、女子バスケをもっと盛り上げていければなと思っています。自分がここまで有名になれたのはバスケットボールあってこそ。だから恩返しとして、バスケットボールをもっと有名にしていきたいです」

渡嘉敷来夢選手

渡嘉敷来夢(トカシキラム)

1991 年生まれ、埼玉県出身。JX-ENEOSサンフラワーズ(WJBL)とシアトルストーム(WNBA)に所属するバスケットボールプレーヤー。2016年のリオオリンピックでは、バスケットボール女子日本代表チームの主力選手の一人として、チームを決勝トーナメント進出に導く。



TEXT : Shota Kato  PHOTO : Takuya Nagamine