私は小学2年生の子を持つ母親なのですが、息子は「◯◯君は新しい靴を履いてきた」とか「自分と同じ靴だ!」など、靴に関する話をよくします。運動会が終わっても、足が速い子がヒーロー的存在なのは変わりません。「足が速い子が履いている靴が欲しい…」と息子からおねだりされることもしばしば。

靴は息子に言われるがままに購入していますが、思えば靴についてちゃんと考えたことはありませんでした。子どもの足を理解し、かけっこで活躍したいならそれをサポートする靴を選んであげるのは親の役目かもしれません。そこで、子どもの足を知り尽くしたプロである、商品企画担当の藤幡知子さんと、デザイン担当の村上聖太さんに、子どもの足の特徴をふまえた靴選びのポイントを教えていただきました。

<目次>

子どもの足は18歳頃まで成長し続ける!だから、靴はしっかり選んで欲しい

子ども向けの靴の商品企画を担当する、藤幡知子さん(アシックスジャパン プロダクトプランニング部ランニング・スポーツスタイルチーム)。子どもの足の形やつくりにとても詳しい。

子どもが口にする物や学習アイテムは、何が良いかいろいろ比較して製品を選ぶようにしています。しかし、子どもの靴についてはあまり調べたことがありませんでした。そもそも、子どもの足はどのように成長するのか、まずは基本的なところから聞いてみました。

――子どもの足は大人と比べて何が違うのでしょうか?

産まれたばかりの赤ちゃんの足は、軟骨でできていて、ふんわりやわらかいです。それが成長とともに、カルシウムが蓄積され硬い大人の骨になっていきます。足の骨が完全に形成するのが18歳くらいと言われています。(藤幡)

――18歳!かなり長い間成長が続くのですね。やはり歩き方も変わってくるものですか?

赤ちゃんは扁平足で、立って歩きだす時は足全体を使うペタペタ歩きです。3歳くらいになると土踏まずが形成されはじめ、5歳頃から、かかとで着地して前足部に重心を移動する、大人と同じ歩き方ができるようになってきます。7〜10歳は土踏まずが最も発達する時期と言われています。(藤幡)

――日々成長する子どもの足ですが、サイズアップの目安はありますか?

一般的に3歳くらいまでは3ヶ月に0.5mm、3歳を過ぎると6ヶ月で0.5mmくらい足が成長すると言われているので、定期的に子どもに合ったサイズを履けているかチェックするのが良いと思います。(藤幡)

子どもの足はやわらかい!サイズが合ってなくても履いている可能性大

子ども向けの靴のデザインを担当している、村上聖太さん(アシックス商事 アシックスプロダクト本部)。子どもの足がどう動くのかを考察し、デザインに取り入れている。

これまでの話をふまえると、うちの息子(小2)の場合、半年ごとに靴を新調することになります。「どうせすぐ大きくなるのだから、脱げない程度に大きめの靴を買っておこう…」と考える保護者の方は多いのではないでしょうか。かくいう私も、そんな親の一人でした…。ところがこの判断が、子どもの足の成長にとっては良くないのだとか。

――サイズが合わない靴を履くことで、子どもの足にどのような影響がありますか?

大きなサイズを履くと、いくらしっかり締めても靴の中で足が動き、シューズのつま先に指がぶつかります。それが足の骨格形成に影響を与え、成長が阻まれてしまうことがあります。また、子どもの足は、軟骨から大人のような硬い骨へと成長する途中段階のためやわらかく、変形しやすい足なんです。そのため、小さいサイズや足に合っていない靴を履いても普通に履けてしまうことがほとんど。「子どもが何も言わずに履いているから大丈夫」と思っていても、実は注意が必要なんです。アシックスとしては、足に合う靴のサイズの目安として、裸足で実測して+5mm程度とご案内しています。(藤幡)

――サイズが合う靴を履くことが、子どもの足にとって大切なんですね。

そうですね。足は走る時に曲がるので、靴も足と同じように曲がるようデザインされています。サイズが合わない靴を履くと、足と靴の曲がる位置がズレてしまうのでフィット感も悪く、足の動きを阻害することもあります。足に合ったサイズの靴を履くことが、靴が持つ本来の機能をしっかり発揮させることにつながります。(藤幡)

――フィット感だけでなく、足の動きも研究して靴をデザインされているのですね。

はい。たとえば、子どもの靴に関する悩みとして「かかとの痛み」をあげる方がいます。かかとの痛みは「足をついた時の痛み」と、「靴ズレによる痛み」の2種類に大きくわけられます。かかとをついた時の痛みは、過度な運動で発生することが多いのですが、靴ズレなど履き口周辺の痛みは、サイズが合わない靴を履いているのが原因です。私たちがシューズをデザインするうえでこだわっているポイントの1つに、「靴をスムーズに履けてホールド感があるかかとのデザイン」があります。シューズを作り上げていく段階で足当たりのある部分は修正を重ね、より履き心地の良い形状になるよう努めています。(村上)

子どもがかけっこで活躍するために。靴はどう選んだらよい?

細かな部分にこだわり、靴が作られているのがわかってきました。では、足の成長期に子どもたちが夢中になる「かけっこ」のときに履く靴はどんなものを選ぶのが良いのでしょうか。かけっこが速くなりたい子を持つ親として、じっくり聞いてみました。

――速く走りたい子どもには、どのような靴を選べば良いのでしょうか?

冒頭にもありました通り、足に合った靴を選ぶというのが大前提ですが、アシックスの「レーザービーム」シリーズの中でいうと、ランナーモデルの「RD-MG」と、スプリントモデルの「SD-MG」は、速く走ることを目的に、細かいこだわりを集結させた靴ですね。(藤幡)

レーザービームについては、こちら

――「速く走りたい!」と願う子を持つ親としてはとても魅力的ですが、他の靴との違いはどんなところにありますか?

子どもの走り方の特徴として、大人より歩幅が狭く、足をついてから次に走り出す間隔が短いという点があります。走る時は、かかとから着地して土踏まずに移動し、つま先で屈曲して蹴り出すという動きをします。そのような走り方をサポートするために、かかとのホールド性、土踏まずの安定、つま先の反発がしっかりできる作りにしています。(村上)

――具体的に教えていただけますか。

かかとについては、成型タイプの「樹脂カウンター」を使い、足が着地したときにかかとが左右にブレてしまうのを抑える役割をしています。(村上)

実はこのあたりにかかとのブレ対策である「樹脂カウンター」が仕込まれている。


さらにソールにもこだわりが。土踏まずの部分に硬い素材(シルバーのパーツ)を使うことで、着地後の足のねじれを抑え、土踏まずから力が逃げずにつま先まで伝達されるような作りになっている。

――そんなに細部までこだわって作られているんですね!

さらに「レーザービーム」のソールのつま先部分は、親指から小指にかけて足の指が曲がるラインと逆向きに溝を入れています。これは親指から離れる時に、そこに力を集結して、力強く蹴り出せるような設計にしています。(村上)

指の付け根の向きと逆に溝が入っているソール。これにより、前に踏み込んだときに親指にかかった力が足の前進を促す。

子どもの力をできるだけ伸ばしてあげたい。そのために靴を履くときに注意すべきこと

せっかく細部にまでこだわって作られた靴も、履き方を間違えると機能が発揮されません。子どもにありがちな「こんな靴の履き方はNG」を教えていただきました。

1.かかとは踏まない

子どもは、靴をきちんと履くことよりも「早く遊びに行きたい!」という気持ちのほうが強いので、かかとを踏んでしまうのはある意味仕方がないとも思います。しかし、かかとを踏むと靴の形状が崩れ、かかとをホールドする力が弱まってしまいます。早く走りたいという目的のためには、かかとは踏まないようにしてください。または「レーザービーム」のように、硬いプレートが入りかかとを踏みにくい靴を履くことで予防できます。(村上)

2.マジックテープや紐は、しっかり留めてフィットさせる

かかとの固定と同時に、土踏まずのアーチが崩れないようにホールドしてあげることが大事です。紐靴は締め上げられ、広い面積で足の甲をおさえることができるのでフィット感が高くなります。マジックテープの場合は、足のサイズに合わせてテープをしっかり留めることで、テープが外れにくくフィッティングも良い状態になります(個人差があるので、足の状態に合わせてください)。締められるのに、緩い位置にとめている、またはテープを外しているのはNGです。(村上)

正しい履き方で足と靴をフィットさせよう。ベルトタイプの正しい靴の履き方

子どもの靴こそ、親の目線できちんと選んであげよう

子どもの足の成長や、走り方の特徴から、わが子が速く走るためにはどのような靴を履かせたら良いかがわかりました。足がどんどん大きくなり、運動量が増える小学生の時期は、足に合わない靴を履かせることが思わぬトラブルに繋がります。

また、お2人からお話をうかがい、子ども用の靴には、足の成長や走り方をサポートするこだわりがつまっていることがわかりました。足に合った靴を選ぶことで、靴の機能が活かされ、足も健やかに成長していくのではないでしょうか。親は子どもの靴選びに対し、もっと気をつけなくてはいけないですね。

Photo:Takuya Ikawa

TEXT:Junko Kobayashi