吉成名高 カラダ

絶対勝てるという
確信が、
カラダにみなぎるまで

その拳やスネは鋼のように硬く、太ももや腕はムチのようにしなる。とにかく敏捷。そうして対戦相手を苦しめて、マットに沈めてきた。キックボクサー、吉成名高。若干17歳にして日本人初のルンピニー&ラジャダムナンの統一王者となった。ムエタイのチャンプ。まさしく偉業。しかしリングを降りた表情は、爽やかなティーネイジャーのアスリートのそれ。ふとした笑顔にはまだあどけなさすら残すが、その意思はどうやら拳以上に堅固である。そのカラダと心に宿るのは、たぶん果てしないほどの可能性。その磨き抜かれた精神と肉体に迫る。

普段の暮らしの中でカラダがいきいきする瞬間は?

やはり、試合中です。「今までやってきたことを全部出さなきゃ」っていう気持ちがカラダにも現れて、試合ではいつも練習以上の動きができていると思います。昔はすごく緊張するタイプだったのでカラダがカチカチになって動かなかったんです。でも最近は試合が楽しくて仕方ありません。

いつ頃から試合が楽しいと感じるようになりましたか?

キックボクシングとムエタイの試合に出始めたのが、小学4、5年生くらいなんですけど、試合を楽しめるようになったのは中学2年生くらい。昔は週3回くらいしか練習していなくて、「負けちゃったらどうしよう」って考えていたし、試合前にお腹がいたくなっちゃったりもして(笑)。緊張しているとカラダが硬くなるし、気持ちも乗ってこないんですよね。そうならないためには、とにかく練習するしかない。それに気づいてからは、週6回、とことんトレーニングで追い込んでいくようになりました。そうすれば「絶対に勝てる」という自信がつくし、自然と緊張しなくなる。練習したらそのぶんだけ自信になって、絶対大丈夫だと思えるんです。

試合の直前はどうやってカラダをつくっていきますか?

試合の6日前くらいまでは追い込んで練習するんですが、そのあとは疲労を抜きながら減量していきます。今年6月に階級を上げたので少し楽になったんですけど、それでも普段の体重から6キロ弱は落としますね。水を抜いたりもするので、ツラいといえばそうですが、減量中はカラダが研ぎ澄まされて、筋肉の動きのキレがよくなる実感もあるんですよ。

もともと空手をされていて、その強化のためにキックボクシングを始めたそうですが、なぜ本格的に転向したんでしょう?

空手の大会にも何度か出場したんですけど、対戦相手が学年で決まるので、小柄な僕に対してすごく背が大きかったり、20キロくらい重い選手と対戦したりすることがあって。そうなると自分の技を出す前にパワーで負けてしまう。それが悔しくて、小学4年生のときに階級のあるキックボクシングに転向しました。空手と違って顔面への攻撃もできるので、技のバリエーションも多いんですよね。それが楽しいと思いました。それを怖いとはなぜか思いませんでしたね。

転向することで動きの違いに戸惑ったりはしなかったですか?

それはなかったです。当時はまだ若かったので。あ、今でも若いですけど(笑)。いい選手の動きを動画で見て、マネしながら動きを学んでいきました。対戦相手から学ぶことも多いです。いろんな人のいいところを盗んで、自分のスタイルができてきました。特に今、集中しているのはパンチにカウンターを合わせること。すごくうまい選手がいるので、映像をよく見ています。まだ研究中ですが、習得できれば大きな武器になるはずです。実際に試したりもするんですが、けっこう難しい。相手が攻撃してくるタイミングを予測したり、自分が攻撃しやすいポジションをとったりしなきゃいけないし。相手が攻撃してくる一瞬を逃せないので、頭も常に冷静でいないといけないし。

試合中、どうしたって興奮してしまいそうですが、頭はいつも冷静ですか?

はい、冷静です。試合中は「次この攻撃がくるだろうから、こうしよう」みたいなことをいつも考えていますね。でも、一発いいパンチをもらったりすると、自分も返さなきゃと思って焦ることもありますし。特に最初の頃はガムシャラでした。でも、強い選手はやっぱり頭を使って戦っているのがわかるんです。自分もそうならないとダメだなって。だから、冷静にやろうという意識も試合を重ねていくうえで身につきました。アマチュアを入れたら150戦くらいしているので、その経験が活きていると思います。

小学6年生のときに初めてムエタイを観たそうですが、ムエタイのなにに惹かれましたか?

観声がすごい。まずはそれに圧倒されました。そしてリング上の選手たちも、その熱に後押しされて、力強い打撃を交換し合っているように見えたんです。なんていうか、すごく楽しそうだった。痛そう? あまりそれは感じなかったですね(笑)。2月に僕が初めてムエタイを観戦したスタジアム(バンコク、ラジャダムナン・スタジアム)でタイトルマッチをしたんです。対戦相手の身長が176センチくらいで、15センチくらい差があって。リーチも負けてるし、現地の人からは「勝つのは厳しい」と言われてたんです。それでも、すごく楽しかったんですよね。カラダがキレて、人生で一番調子がいいんじゃないかなって思うくらいで。試合内容も自分のやりたいことが全部できて、判定勝ちしました。声援が大きいほど、楽しめるタイプなんです。

調子がいいと感じる時、カラダはいつもとどう違いますか?

考えるよりも先にカラダが動きます。その試合までの3ヶ月間、対戦相手を見据えたトレーニングをずっとしていましたから。カラダが自然に動いたんだと思います。あと、カラダがそういう状態になるには、どれだけ集中できているかも大きいですね。練習でも集中しますけど、やっぱり試合とは違いますから。うまく集中できると、不思議と会場の歓声、味方のセコンド、相手のセコンドの指示までクリアに聞こえてくるんです。たぶん、いろんな感覚が研ぎ澄まされるんですね。ムエタイは頭と心とカラダが密接に繋がっているスポーツなんです。常に頭は100%クリアな状態でいることが大事で。いい攻撃をもらって「やばい」と思っても、混乱しないでいること。さらに「絶対に勝てる、倒してやる」っていう気持ちも大事。それがなければ、カラダは動きませんから。

ロードワークも欠かさないそうですが、シューズはどのように選んでいますか?

週6日、朝晩で7キロずつ走っています。ひとりよりもジムの仲間とわいわい楽しく走るのが好きですね。雨の日はランニングマシンを使うんですが苦手です。音がうるさくて話せないので、退屈で(笑)。ロードワークはどうしてもアスファルトの上が多くなるので、長い距離を走ると膝が痛くなってしまうことがあります。だからゲルが入っているような、クッション性の優れたシューズが好きですね。スプリント系のトレーニングをする時は、軽量の靴を選ぶこともあります。お気に入りのシューズは長く履いていたいとも思うんですが、1カ月半くらいでソールがすり減ってしまうんです。毎日長距離を走るので仕方ないんですが。

吉成名高 × カラダ × ASICS

「カラダの状態がいいと、試合前のシャドウが格段に軽い」。彼はそう語る。いい状態とは、カラダの軽さに比例すると言ってもいいのかもしれない。ランニングシューズにも同じことがいえる。軽さは優れた機能そのものだ。ましてや彼の場合は、裸足でリングを踏みしめ、もちまえのスピードで勝負に挑む。そのファイトスタイルは、TARTHEREDGEと共鳴するのかもしれない。軽量かつグリップ感に優れ、強い推進力を生み出すシューズのように。

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PROFILE

吉成名高

キックボクサー/ムエタイファイター

2001年、神奈川県生まれ。空手経由でキックボクシングに熱中。15年11月にプロデビューを飾った(2ラウンドKO勝利)。以来、戦績は29戦25勝(14KO)4敗。ミニフライ級でルンピニースタジアムとラジャダムナンスタジアムの認定王者。IBFムエタイ世界ミニフライ級王者でもある。