役者と農業の二刀流で叶える
工藤阿須加の目指す道
役者と農業の二刀流で叶える
工藤阿須加の目指す道
数々の映画やドラマで役者として力強い存在感を放つ工藤阿須加さん。
2021年からは山梨県北杜市の〈ファーマン 井上農場〉の一角で自身の畑を耕し、幼少期から関心のあった農業の道に本格的に足を踏み入れている。
スクリーンやテレビといった活動で忙しい日々のなかで、泥だらけになりながら、実直に農業に取り組む工藤さんにとって、目指すべき道とはどのようなものなのだろうか?
相互に作用し合う役者業と農業という二つの道に真摯に向き合い、突き詰めることで見えてきた新たな使命やそれぞれの仕事の魅力について話を聞きました。
Photograph & Direction_Naoto Date
Videograph_Ryosuke Senda
Styling_Kohei Oishi
Hair & Make-up_ShinYa
Edit & Text_Mikiko Ichitani
農業と役者、僕にとってはどちらも真剣。
— 工藤さんが農業に関心を持つようになったきっかけから教えてください。
母の影響です。母はアスリートであった父の体調を考えて食材選びからこだわるような人で、野菜も農家さんのもとへわざわざ仕入れに行くほど。母と一緒に一次産業の方たちのお話を聞いていくうちに、自然と日本の農業の現状や課題について考えるようになっていって。日本ならではの恵まれた環境を次の世代につないでいきたいという思いから、もっと深く学んでみたいと思うようになっていきました。
— その後、東京農業大学に進学されました。大学ではどのようなことを学んでいたのでしょうか?
大学では授業はもちろん、実習にも積極的に参加しました。農業について知れば知るほど、想像以上に研究している人がたくさんいること、そしてその成果を発信する場や人が圧倒的に少ないことに気がつきました。同時期に昔から映画が大好きだったので、役者になることを目指すようになりました。結果として役者になった事により、発信する機会が得られたので、それは本当に良かったと思っています。
— 役者として確実に実力をつけてこられた工藤さんが、改めて農業の道に戻ってきたのにはどういうきっかけがあったのですか?
2020年にコロナで世の中や仕事が完全にストップしたことで、農業のことを改めて考えるようになったんです。時間や費用もかかるので、老後の楽しみにしたら?という声もあったのですが、それだと遅いという直感があって。30歳と40歳でも10年分の開きがあるわけで、早いうちから身体で経験していかないといけないんじゃないかと考えるようになりました。
— 役者と農業、向き合う時間がそれぞれの仕事に作用していると感じることはありますか?
僕にとってはどちらも真剣です。一方が煮詰まったら、もう一方が開放してくれるんですよね。辛いことやしんどいことがあっても行き来することで、メンタルを穏やかに保てる気がします。誰かに面白いとか、美味しいって思ってもらいたいという感情のゴールは2つとも一緒なので、相互にいい作用が生まれたらいいなと思っています。
— 地域の方たちとはどのように関係を築いてこられましたか?
最初にこの農園を管理している井上農場さんからどれくらい本気なのかと聞かれました。もちろん僕は本気だったし、行動で示しますと答えて、行けるときは朝から晩まで、ずっと畑にいました。たくさんのことを吸収したかったので、自分の畑だけではなく井上農場さんの畑作業もお手伝いさせていただきました。僕にとってとてもありがたい経験です。
— この土地で農業を始めて関わる人が増えたことで、ご自身の変化を感じる部分もありますか?
やっぱり人は一人では生きていけないんだということを実感させられました。どうしたって誰かと関わるし、気付かないうちに助けられることもたくさんあって。郷に入ったら郷に従え精神で、とにかくがむしゃらにやってきましたが、みなさんちゃんと見ていてくれるんですよね。その上で縁もゆかりもない僕をみんなが受け入れてくれる。日に日に感謝の気持ちが強くなっているのを感じます。
もっとみんな自由に心を耕して
豊かに生きていきましょうよって思います。
— 今日は工藤さんの農園での姿を撮影させていただいたのですが、アシックスのシューズを一日履かれていかがでしたか?
とにかく軽くて足の負担を軽減してくれますね。作業靴ということでつま先部分には先芯が入っているんですけど、従来は鉄などの金属が使われるところにガラス繊維強化樹脂という素材が使用されていて軽く、ふだん履きのようなフィット感と快適さがありました。アッパーにゴアテックスファブリクスが使われているので、雨の日の作業や泥で汚れたときもささっと洗えるところも気に入っています。
— 工藤さんにとってアシックスはどのようなイメージがありますか?
僕は学生時代にテニスをやっていたのですが、当時好んで履いていたのはアシックスでした。テニスは靴の消耗が早いと言われていて、コートの材質も違うし動きも激しいので、丈夫でクッション性の高いアシックスのテニスシューズにはいつも助けられていました。
―役者業と農業、それぞれの仕事で工藤さんが大切にされていることを教えてください。
とにかく今の自分が持てるものをすべて出すこと。どんなコンディションだったとしてもベストを尽くす。家族や友人、周りの人たちはもちろん、僕の芝居を楽しみにしてくれる人たちや僕の作る野菜を食べてくれる人たちに、たとえ小さくても幸せを感じてもらえたらうれしいです。
— どちらかひとつではなく、持続可能な範囲で両方に取り組む働き方の意義や魅力は何だと思いますか?
農業の経験が役者として重要な “役を生きること” に密接につながっていると思います。毎年種を植えて、何千、何百という成長を観察していると、人の人生みたいに見えてくるんです。すくすく育つものもあれば、芽が出なかったり、途中で病気になってしまうものもある。かと思えば急に成長したりして、ひとつひとつにちゃんと物語があるんです。さまざまな経験を重ねることで自分の人生の奥行きや彩りも増えますし、もっとみんな自由に心を耕して、豊かに生きていきましょうよって思いますね。
— 役者と農業を両立する生活を始めて5年。工藤さんの目指す未来はどのようなものでしょうか?
次の世代にどうやってバトンを渡すかというのは常々考えています。以前は日本を変えてやるぐらいのことを真剣に思っていましたが、一人の力には限界があることを実感していて。僕が関わる人たちやこれから関わるかもしれない人たちが、少しずつでもお米作りや野菜作りの楽しさや面白さを知るきっかけを作っていきたい。その先で一人ひとりが興味を持って、調べてみようと思ってくれたらうれしいですね。
— そのためにはテレビやSNSを通した発信が大切になっていくんですね。
野菜と同じように、種は撒けるうちにたくさん撒くべきだと思っていて、やってみないことには次のバトンにつながらない。だからこそ、これからも全力でこの2つの仕事と向き合っていきたいと思っています。
1991年8月1日生まれ。埼玉県出身。
ドラマ『理想の息子』(12)で俳優デビュー。
主な出演作に『ちょっと今から仕事やめてくる』(17)、『総理の夫』(21)、『ハケンアニメ!』(22)、Netflixシリーズ『御手洗家、炎上する』(23)、『ゴールデンカムイ』(24)などがある。
また、現在日本テレビにて放送中の「有吉ゼミ~工藤阿須加 楽しい農園生活~」では、山梨県北杜市の広大な畑で農薬を使わない栽培で野菜作りに挑戦中。
他、レギュラー番組にBS朝日「工藤阿須加が行く 農業始めちゃいました」や 2025年10月11日からは日本テレビのドラマ「良いこと悪いこと」に出演。 映画「てっぺんの向こうにあなたがいる」は現在公開中。 公開待機作に劇場版「緊急取調室 THE FINAL」12月26日、 映画「ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編」2026年3月13日がある。