Vol.02〈ASICS SportStyle〉の
革新を支える屋台骨


〈ASICS SportStyle〉というASICSブランドのカテゴリーをご存知でしょうか。
スニーカーやコラボレーションを通して耳にしたことがあるという方は多いかもしれませんが、
〈ASICS SportStyle〉の根底にある想いや、成り立ち、これからのビジョンを知っていただき、
カテゴリーを深く知っていただけるコンテンツを提供します。第2弾では、〈ASICS SportStyle〉のプロダクトの品質や
先進性を支える存在であるアシックススポーツ工学研究所について。
この場所で日々生み出されるテクノロジーの源流を探る。
人を中心に新たな価値を


兵庫県神戸市のASICS本社から、車で30分ほどの距離にあるアシックススポーツ工学研究所(ASICS Institutes of Sport Science、以下ISS )。〈asics
sportstyle〉のプロダクトの根幹を成す部分として機能しているこの研究所は、どのような役割を担っているのだろう。
「人を中心に、科学的なアプローチを行うヒューマンセントリックサイエンスというポリシーをもって活動しています。アスリートに限らず、世界中の人々の能力や感性を最大限に引き出せるような、技術やプロダクトの価値創造を使命として研究を続けています。ISSの強みのひとつとして、膨大なデータの蓄積が挙げられます。足形のデータであれば200万人分ほど。実際に走行している際のデータは10万以上保有しています。こうしたデータをベースにシューズの設計指針を立て、数値を用いたアプローチを大切にしています。加えて素材の開発もこの研究所で行えるので、素材の改良や改善を円滑に進めることができます。動作分析、素材の開発、シミュレーションといった一連の流れをひとつの施設で行えることこそ、大きな強みであると考えています。」アシックススポーツ工学研究所プロダクト機能研究部
構造機能研究チームの高浜健太と同研究所の研究戦略部 技術戦略チームの石川泰葉は研究所の特徴について、こう説明する。
多くの設備が揃うISSでは、多岐にわたる研究が行われている。陸上トラックを再現したフィールドでは、身体やシューズに掛かる負荷をデータに起こしたり、モーションキャプチャーを通じて、身体の動きに沿った研究を行う。素材の研究開発や、ロボットを用いたテストも行われている。人を使った実験や機械試験から得られるフィジカルなデータと、コンピューターシミュレーションなどデジタルのアプローチを組み合わせ、ユーザーにとって優れたパフォーマンスは一体どんなものなのかを、多角的に検証しているのだ。1990年にこの研究所が誕生してから30年余り、パフォーマンスを磨き上げるための存在として価値を発揮してきたが、ライフスタイルやファッションとの親和性に重きを置く〈ASICS SportStyle〉においては、その技術やデータはどのように活用されているのだろうか。
「たとえばランニングシューズであれば、ケガをしにくいとか、軽量であるとかパフォーマンスに影響する指標が重要になります。しかし〈ASICS SportStyle〉では、より感覚的に快適であるということが重要と考えているので、その感覚をはかる指標の数値化に着手しています。パフォーマンスランニングの研究で培った知見を活かして、データとして重視する指標をライフスタイル向けに定めるなど、日常生活における感覚の評価に重きを置いています。」
ISS、ひいてはASICSの根底にある、人を中心にしたとらえ方。たとえばアスリートのパフォーマンスを最大限に引き出すために行う研究は、そこに人の存在がある限り、ライフスタイルやファッションの領域においても、応用できる可能性があるのだ。
「ユーザーがどう動いて、どう力を発揮して、どう振舞っているのかということを把握し、動作を補うために必要なプロダクトはどんなものかということを考えています。そしてプロダクトに対して、構造から、材料からどの部分からアプローチするべきかを常に意識しモノづくりを行っています。その過程で、研究に使用する機器をはじめ、技術の進歩という部分も活用しながらアップデートを続けています。」より良いプロダクトを生み出すために、人を中心にしたデータの蓄積、解析を行うこと。そしてそれらのデータの精度を上げながら、最適な数値を導き出すこと。そのサイクルを回しながら、画一的な方法ではなくモノづくりのアップデートを模索する。
「今までの数値の指標を常によくするというアプローチだけでなく、それぞれを組み合わせながら、新しい価値を創造していくようなアプローチが増えてきました。」
単に従来のパフォーマンス向けの指標を更新していくだけでなく、蓄積されたデータを組み合わせたり、分析する視点を変えてファッションやライフスタイルに活用できる指標を導き出す。抽象的な感覚や感性に対応するための試行錯誤の積み重ねによって、〈ASICS SportStyle〉は、ファッションのまだ見ぬ可能性をロジカルな観点から探っていく。

ロボットを用いたテストでは、走行時や歩行時の角度、負荷を再現し、シューズにかかる力や変形状態の分析を行う。本来は競技用のテストのために使用されているロボットだが、ライフスタイルの指標に合わせたアレンジを行い、検証できるデータの幅を広げているという。