Vol.03新たなモデルに見る
次なるフェーズ

The Essence ASICS SportsStyle The Essence ASICS SportsStyle

〈ASICS SportStyle〉というASICSブランドのカテゴリーをご存知でしょうか。
スニーカーやコラボレーションを通して耳にしたことがあるという方は多いかもしれませんが、
〈ASICS SportStyle〉の根底にある想いや、成り立ち、これからのビジョンを知っていただき、
カテゴリーを深く知っていただけるコンテンツを提供します。第3弾では、アシックススポーツ工学研究所で開発された
Scutoid GELテクノロジーを搭載した新モデル、GEL-KINETIC FLUENTについて。
「GEL」の特性と、それを用いたデザインについて紐解きます。

テクノロジーの結晶

スニーカー画像 スニーカー画像

第2弾でも触れたように〈ASICS SportStyle〉における重要な拠点として機能している、アシックススポーツ工学研究所(ASICS Institutes of Sport Science、以下ISS)の存在。動作分析や開発中のプロダクトのデータを解析するだけでなく、独自に素材の研究開発も行っている。その賜物とも言える素材がScutoid GELテクノロジーだ。アシックススポーツ工学研究所 プロダクト機能研究部 構造機能研究チームの高浜健太と同研究所の研究戦略部 技術戦略チームの石川泰葉が、ASICSにおけるGELテクノロジーの成り立ちから話をスタートしてくれた。
「もともとGELテクノロジーは、1986年から採用しています。当時は70年代頃からのアメリカのマーケットにおけるランニングブームの影響もあり、ランニングシューズに対する機能開発が活発に行われていました。当時、ソールにメインで使用されていた、緩衝性能の高いフォーム材に変わる素材として採用されたのが「GEL」でした。当初の「GEL」は、外部の材料メーカーに依頼したものを採用していましたが、今では自社でも研究開発の対象となっています。フォーム材が進化しているように、「GEL」も現在まで進化を続けており、例えば当初はシューズに内包されていたものを、外から見える箇所に採用できるように耐久性を強化したり、発泡させて軽量化が可能になるなど、改良が進んでいます。」
そんな中、2019年頃に開発されたのが、この「Scutoid GEL」。ではこの素材が生まれた背景や優位性は一体どこにあるのだろうか。
「このScutoidという形状は、人体の上皮細胞に見られる形状で、生命科学分野の論文から発見しました。従来の「GEL」は上面と下面が同じ形状なのですが、「Scutoid GEL」は上面が五角形、下面が六角形となっていることが特徴のひとつです。上下で異なる形状とすることで、衝撃や荷重に対して、まっすぐ潰れずに捻れたり、少しズレるなど変形性能が上がり、クッションをより感じやすくなるのです。実際に、研究所での実験を通して、クッション性の向上も確認されています。」
人体の構造という、意外なインスピレーションから生まれた「GEL」が、素材をデザインに落とし込む過程は、簡単な道のりではなかった。

GEL画像GEL-KINETIC FLUENTに採用された「Scutoid GEL」。ボリュームのある独特の形状が、ライフスタイルシーンにおける快適な履き心地をサポートする。

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意思をもった
素材とデザイン

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スニーカー画像新モデルとして登場する、GEL-KINETIC FLUENT。落ち着いた色味をベースに、パーツごとの細かな配色がアクセントになる。「Scutoid GEL」の存在感は見た目にも感じられるが、何より足を通して履き心地を体感いただきたい。

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「Scutoid GEL」を搭載した新モデル、GEL-KINETIC FLUENTには兄弟のようなモデルが存在する。ASICSにおける先進テクノロジーをライフスタイルに落とし込んだGEL-QUANTUM KINETIC。そこからよりファッションに合わせやすいデザインと、弾むようなアクティブな履き心地を追及して、GEL-KINETIC FLUENTが誕生した。異質な形状をした「Scutoid GEL」の存在感を活かしつつ、ファッションにおけるデザインとして表現されている一足は、〈ASICS SportStyle〉の今後の方向性を予感させるものとも言えそうだ。スポーツスタイル統括部 開発部の石井拓人とデザイン部の竹井惇が、開発のプロセスについて話してくれた。
「競技カテゴリーのプロダクトも同様ですが、〈ASICS SportStyle〉では機能とデザインを切り離して考えることはありません。装飾としてデザインするのではなく、機能的で理にかなったデザインを心がけています。同時に、ユーザーのファッションに合わせやすいものを望んでいるというマインドも大事にしたいので、双方の視点の調和を追求しています。「Scutoid GEL」の機能性を損なうことなく、ファッションにおけるアクセントとしても活用できるデザインを心がけました。」
GEL-KINETIC FLUENTは、テクノロジーがデザインに表現された、視覚的にインパクトのあるプロダクトだが、単に特徴的な見た目を打ち出すためだけではない。 「ライフスタイルシーンでは、ランニングなどと比べてシューズに体重がそこまでかからないので、立っている時の快適性を求められています。効率的な変形性に優れた「Scutoid GEL」を使用するのも、低荷重でもクッション性を体感してもらえるという狙いからです。」
先進的な研究結果がもたらす機能やデザインにおける可能性を活用して、感性に訴えかけるプロダクトを生み出そうとしている。トレンドの分析やマーケットの動向をとらえることは、あくまで副次的な要素であり、人の感性への的確なアプローチを〈ASICS SportStyle〉は探し続ける。

スニーカー画像開発過程のデザイン画とパーツの一部。ユーザーに届くまでの道のりは、細かく緻密な作業の連続だということがうかがえる。

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