全敗の慶應が全勝の早稲田に勝利した伝説の早慶戦

大学スポーツ界において象徴的なライバル関係にある早稲田大学と慶應義塾大学。両校の伝統の戦いは「早慶戦」と称され、その存在はもはや大学、スポーツの枠にとどまらず、幅広く認知されています。


大学スポーツの魅力にふれる入口として早慶戦にかけるさまざまな想いを紹介するこの企画、第2弾はアシックスがオフィシャルサプライヤーを務める慶應義塾體育會蹴球部(ラグビー部)を訪ねました。

ラグビー早慶戦

両校のラグビー部は関東大学ラグビー対抗戦Aグループに所属し、早慶戦は毎年必ず11月23日・勤労感謝の日に行われています。慶應義塾體育會蹴球部の金沢篤ヘッドコーチとマネージャーの正木優里江さん(文学部4年)に、早慶戦にかける想いを聞きました。


——金沢ヘッドコーチは慶應義塾體育會蹴球部の選手でもありましたが、早慶戦の魅力をどのように感じていますか?


金沢 印象に残っている早慶戦は、僕が1年生の時にあった全敗の慶應対全勝の早稲田の一戦。下馬評では早稲田の楽勝でしたが、なんと慶應が勝ったんですよ。今でも鮮明に覚えていますが、15対17の2点差で負けている場面で、稲葉さんという僕の1つ上の先輩がペナルティゴールを決めて逆転するんです。その光景を僕はずっと後ろから見ていて、勝った瞬間に飛び上がって喜んだのをよく憶えています。


——下馬評を覆せたのは何が影響しているのだと思いますか?


金沢 間違いなく、持っている力の100%以上を発揮できる瞬間があるんですよね。本来の力以上のものが発揮できるわけがないと思う部分もありますが、現実として自分が選手の立場になると、そういう力が出る瞬間があるということも肌感覚としてあって。その象徴的なシーンが早慶戦なんです。一方で、早慶戦にはそういった力を一切出させない魔の力もありますが(笑)。それが、僕が1年生の時に経験した18対17の試合だと思いますし、去年の早慶戦で序盤に点を簡単に取られてしまう慶應がそういう力に引っ張られていたとも感じます。なので、必然的に熱い試合になることが多いんですよ。どちらかが圧倒的に力を持っている年でさえ接戦になったりするのは、そういう力が働いているのかなと。


——ヘッドコーチとして、早慶戦の前だからこそ特別にかける言葉はあるのですか?


金沢 僕はいかに選手たちが通常通りに試合に入れるかを意識しているので、彼らにかける特別な言葉はありません。選手たちは勝手に気持ちのスイッチが入ってしまいますし、自分があまりモチベーションを上げ過ぎると、かえって本来の力を発揮できないことが心配になってしまうというか。なので、程よい興奮レベルでグラウンドに送り出せることが大事だと考えています。

慶應ラグビー部金沢篤ヘッドコーチ

——正木さんはマネージャーの立場から早慶戦という伝統の一戦について、どう感じていますか?


正木 早慶戦での慶應の選手の低いタックルに憧れて慶應義塾體育會蹴球部を志望したという人は多くいます。そういった人たちの声からも、やはり早慶戦は特別なものなんだなと伝わってきます。関東大学対抗戦の早慶戦は毎年必ず11月23日に設定されているんですが、早慶戦が近づくにつれてチームの雰囲気も変わっていきますね。みんな口には出しませんが、早慶戦にメンバー入りしたいという想いは特に早慶戦が近づくにつれ高まっていると感じます。

静寂と騒然の差が激しい早慶戦特有の雰囲気

——試合会場である秩父宮ラグビー場の雰囲気も、やはり早慶戦となると他の試合と比べて違うのでしょうか。


金沢 2万人近くの大きな歓声で最初、自分たちの声が聞こえないんですよ。結構大きな声を出しても届かなかったりするので、選手を含めコミュニケーションに対しては意識していますし、他の試合と比べて明らかに異様な雰囲気があります。ペナルティキックやスクラムの直前では会場全体が静まり返りますし、静寂と騒然の差がかなり大きいので、そういう意味では選手の送り出し方というのは重要なんですね。彼らが雰囲気に呑まれすぎないようにしないといけないなと。


正木 観客が他の試合よりも断然に多いので、異常な盛り上がりを見せる試合です。慶應義塾體育會蹴球部としては、会場を黄色のフラッグや黄色のTシャツを着た観客で会場を黄色に染めるというプロジェクトを始めています。それがようやく浸透してきてスタンドに黄色が目立つようになってきました。それを選手たちが見ることで、自分たちにはサポーターが沢山いるんだと知って、少しでも励みになればと思っていて。早稲田を色で圧倒するというプロジェクトをはじめ、観客動員数を増やすための企画は、私たちマネージャーと応援指導部が一緒になって進めています。

慶應ラグビー部マネージャーの正木優里江さん


応援指導部の応援

金沢 応援指導部の応援には吹奏楽も含まれるのですが、ラグビーの応援は鳴り物が禁止なんですね。僕が学生の頃は応援指導部が会場に来ることはなく、ここ何年かで応援指導部がハーフタイムでラグビーに沿った応援をしているというような環境に変わってきました。ラグビーの応援はサッカーや野球のようにタイミングよくコールがかかったり楽器演奏されるわけでもないので、静けさはラグビー特有なんです。

慶應ラグビーの真髄である低いタックルに注目

——ラグビーはテレビ中継でルールの解説を盛り込む工夫をしていますが、慶應ラグビーの見どころを教えていただけますか。


金沢 慶應は伝統の低いタックルが真髄ですので、向かってくる相手の足を目がけてタックルするプレーから慶應ラグビーの魅力を感じていただきたいですね。ラグビーは15人でやるスポーツですので、たとえひとりのスター選手がいても勝てません。逆に言えば、15人の力を結集すれば伝説の早慶戦のように難しい相手にも勝ち取れることがあるので、そこがラグビーの一番の魅力だと思います。はじめてラグビーを観戦される方々には「音」にご注目いただきたいです。体が激しくぶつかり合うときに出る音にきっと驚かれると思います。

ラグビー早慶戦

正木 慶應はスポーツ推薦がないので、他の大学に比べて体の大きい選手が揃っているわけではないんです。でも、体格に劣るなかでタックルの精度を高めることによって大きな選手を倒していく。15人全員がそのようなタックルをしたら絶対に強い相手にも勝てると思いますし、果敢に立ち向かう姿、激しくぶつかる姿を見て何か感じていただけたら、きっとラグビーの魅力が伝わるはずだと思います。


金沢 タックルに必要な要素はメンタル7割に対してスキル3割なんです。これはスキルを軽んじているというわけではなく、タックルするときの恐怖心が一番の大きな壁になるんですね。早慶戦では応援や歓声の後押し、試合に出られない4年生の思いなども乗っかってきます。だからこそ、普段よりも精度の高いタックルへとつながっていく。ここ6年の慶應義塾體育會蹴球部は引き分けを挟んだものの早稲田に勝利できていませんが、ぜひ早慶戦では、慶應伝統の低いタックルにご注目ください。


ラグビー早慶戦は11月23日(木) 「ラグビー早慶戦Tシャツ」を着て応援しよう!

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・大学スポーツを楽しもう! vol.1「伝統の早慶戦! その醍醐味とは?」はこちら


TEXT:Shota Kato PHOTO:Hiroshi Ikeda