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ジェットスプリント、あらわる!

足裏全体で地面をとらえ、加速するスピード。スプリンターがイメージした走りを具現化するのは、反りを抑えたフラットソールと軽量でバネのようなアッパー。

トップスプリンターの走りを研究して生まれた『ジェットスプリント』。ジェット級のパワーが、一直線に空気を切り裂く。

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反りを抑えたフラットソール

ソールの反りを抑えたフラット構造により、足裏全体で地面をとらえて加速する。
蹴り出し時に、より大きな推進力を発揮できるようサポート。

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軽量で横ぶれを抑えるアッパー構造

軽量でバネのような性質をもつ『HL-0 メッシュ』を採用。
縫製箇所を極力減らすことで優れたフィット性を実現。


JETSPRINT

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「フラットなソールのスパイクシューズを履くことで、 さらにフラット走法を意識するようになりました 」

素足感覚が僕の理想

僕がアップシューズや、スパイクシューズに求める一番の要素は、フィット感と軽さです。靴を履いて走っているという感じではなく、素足に近い感覚で走れるのが理想です。そのためスパイクシューズに限らずアップシューズも軽く、ソール(底)の薄いタイプを好んで使っています。軽さという面では、中学から陸上競技を始めて10年になりますが、ずっと軽いタイプのものを選んで使ってきました。アップシューズ、スパイクシューズ共に、がっちりホールドされるというより、素足感覚を当時から求めていたのだと思います。

ソールは硬めでフラット

スパイクシューズのソールは硬めでフラットなものを使っています。高校時代より筋力もアップし、身体も大きくなってきているので、ソールの硬さは徐々に増してきています。 ソールがフラットなタイプを好むようになったのは高校2年生ぐらいからです。それまで苦手だったバウンディングができるようになり、走り方や接地の感覚が変わってきたこと(つま先接地からフラット接地へ)が主な要因だと思います。しかし、当時はソールがフラットなタイプのスパイクシューズは短距離用にはなく、それに近いタイプのものや長距離用のスパイクシューズなどを選んで使っていました。
そうしたなか、高校3年生のときに10秒01を出したこと、その後も世界選手権や五輪に出場することで、自分が使うスパイクシューズに関してもいろいろと意見を聞いてもらえるようになったのは大きかったと思います。素足感覚を大事にしているので、無駄というか自分の感覚を邪魔するものは(スパイクピンなどを含め)排除し、なるべく軽くシンプルで機能なども必要最低限に抑えて作ってもらっています。突起やピンの配置なども動きの感覚に合わせて、僕の意見を反映させてもらっています。練習時もレース時と同じタイプのスパイクシューズを使っています。
スパイクピンの長さは練習では5mm、レースでは5mmや7mmと体調やその日の感覚によって変えています。長すぎると走りの感覚が違ってくる(身体が上に浮いた感覚になる)ので短いタイプが好みですね。しかし、これも今以上に筋力がアップしたり、身体の使い方がうまくなれば、ピンの長さやプレートの硬さの好みも変わってくると思います。

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フラットソールを使うようになり走りの感覚がアップ。
地面からより反発をもらえるようになった

タイムだけ見れば0秒03の進歩ですが、体格はもちろん接地の感覚や動き自体も高校時代から少しずつ変わってきていると感じています。ソールがフラットなスパイクシューズで普段から練習していることで、(フラット接地や重心移動など)よりそうした動き、感覚が磨かれてきているのではないでしょうか。そういった意味では相乗効果を生んでいると思います。今のタイプのスパイクシューズを履くようになり、より地面からの反発を感じるようになりました。
担当者とは何度も何度も打ち合わせを重ねて今のモデルを作っていただきました。だからこそ、そのシューズで日本人初の9秒台を出せたことは本当に良かったと思っています。スパイクシューズは、車で言えばF1のレーシングカーのようなもの。足型も綿密に計測してもらって作っており、精巧なだけに少しのズレが気になってしまいます。僕は普段、スパイクシューズを履く際は、靴下を履かないので最初にも話したようにフィット感は特に重要視しています。これをぴったり合わすのに1年以上かかりました。

フラットソールの登場で選択肢が増えた。
走りの感覚にマッチしたシューズを。

僕を含め東洋大時代のチームメートの中にもソールのフラットなタイプを求める選手が結構多くいました。短距離用のスパイクシューズはどのメーカーもたくさん種類を出していますが、ソールがフラットなタイプはこれまで見かけませんでした。今回、そうしたソールがフラットなモデルが短距離用のスパイクシューズに加わったことで選択肢が増えたことは選手にとっても良いことだと思います。走り方や接地なども選手によって異なります。ですから、スパイクシューズにもいろんなタイプがあっていいと思っていました。僕が履いているから良いというのではなく、今回、初めてソールがフラットなタイプが出るので、一度試してもらって、自分の走りにマッチしたタイプのものを選んでほしいと思います。

桐生祥秀 (日本生命)

きりゅう・よしひで◎1995年12月15日生まれ。滋賀県出身。彦根南中(滋賀)→洛南高(京都)→東洋大。
洛南高3年時に10秒01の当時日本歴代2位の記録をマークし注目を集める。東洋大に進み、4年時の日本インカレ100m決勝で日本人初の9秒台となる9秒98(+1.8)の日本新記録を樹立した。13・17年世界選手権、16年リオ五輪代表。リオ五輪、17年ロンドン世界選手権では、4×100mR(いずれも3走)で銀&銅メダルを獲得した。
自己ベスト:100m・9秒98(17年)=日本記録、200m・20秒41(13年)


スパイク研究者たちの新たな挑戦

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これまでの足の甲から指先にかけて角度のついたスパイクから、
桐生選手専用スパイクを参考に足裏全体で地面をとらえる フラットソールを採用したジェットスプリント。
その違い、特長について、バイオメカニクス(走法分析)の研究者、桐生選手専用スパイク、
ジェットスプリントの開発に携わった担当者の話を交えながら解説する。

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足裏全体で捉える “フラット走法”

―フラット走法について教えてください。

小林

桐生選手に限らず短距離のトップ選手は、当然のことながら地面反力は大きくなります。スピードが上がれば上がるほど、つま先だけで接地していては耐えられないことになり、フラット接地を意識する・しないに関わらず結果的に、足裏全体でとらえていることになります。これがフラット走法と呼ばれるものです。スピードはストライドとピッチの掛け算で決まります。桐生選手の場合、ピッチは10秒0台の時と変わらないけれどもストライドが伸びたことでタイムが向上しています。
それは接地の際、地面からもらう反力が大きくなっているということであり、接地の感覚(同じ接地の時間内により大きなパワーを地面からもらう動き)がより磨かれた結果だと言えます。9秒台時を含め2017年シーズンを通して、そうした動きができていたことがデータからも示されています。

接地の安定を高次元でサポート

―これまでのソールに角度のあるスパイクとジェットスプリントのようにフラットなタイプとの違いは?

田﨑

これまでマック式に代表されるように、つま先立ちで腰を高い位置で保つ走り方、指導が主流でした。短い接地時間、素早い切り返し(速いピッチ)を意識したつま先(フロント)接地と呼ばれる走法です。そうした動き・走り方をサポートする形でスパイクの設計もされてきました。桐生選手の場合、高3時に10秒01を出した時は、まだソールに角度のついたスパイクを使用していましたが、それだと本人いわく接地の感覚が“点”になってしまい、大きなパワー、推進力が得られないということで、“面”でとらえることができる “ぺったんこな”ソールにしてほしいという要望が聞かれるようになりました。金丸祐三選手(大塚製薬)なども角度のあるソールだと「自分の走り以上のものが出てしまい、感覚が違ってくる」と表現し、フラットに近いソールを使っています。

小林

日本人は、海外の選手と筋力や骨格などに違いがあり、ストライドよりピッチを生かした走りのタイプになります。高身長で筋力がある外国人選手の場合(例えば、ジャマイカなどの選手は、アキレス腱が長く、ふくらはぎの筋肉もヒザよりの高い位置に付く傾向があるなど)、ピッチ型の選手と比べ接地時間も長く、ストライドが大きい走りとなります。いずれのタイプも、トップ選手の場合、接地が安定していることで地面から大きな反力をもらい、それを推進力に変えていると言えます。

田﨑

桐生選手から足裏全体を使いたいという要望がありソールをフラット(上下・反りの角度、左右・内外の傾き<ラウンド>共にフラット)にし、さらに自分の感覚と地面との距離をなくしたい(隙間をつくらずダイレクトに感じたい)ということだったので、従来よりもソールを薄くし突起物などもできるだけ少なくしました。薄くしたうえでトップ選手が生み出すパワーに耐えるだけの強度を保つようにするために新たな技術が必要でした。

菱川

これまではソールに角度がある形状で足入れ、フィット感を合わせてきました。角度のあるタイプとフラットなモデルでは、当然足入れ感、フィット感なども違ってきます。サイズ感を含め、どうフィットさせるかという点は特に工夫が必要でした。

小林

コンマ何秒の世界ですがトップ選手でも接地の際、やや小指側から入り母指球へ抜けていく選手が多いように思います。ですが映像を見ても桐生選手は比較的、フラットに接地しています。

菱川

ジェットスプリントもフラットモデルとはいえ、少し小指球部にラウンドを付けることで接地がスムーズになるよう工夫しています。さらにパワーを逃さぬよう、ブレを抑えてしっかり足にフィットし、かつ軽量化を実現するためアッパー部分の素材にもこれまでにない工夫を施し、高次元で足との一体感を高めています。

時代と共に変化する走法、
指導法にマッチしたスパイクづくり

―桐生選手も話しているように、フラットモデルを希望する選手も増えているようですが

小林

指導方針なども含め、少しずつ走りのイメージ、動きづくり、トレーニングそのものも変化し、桐生選手に代表されるような走り方、動きが主流になってきています。近年では一歩一歩しっかり乗り込んでいく走り方に変化してきており、指導のトレンドとしても、末端への意識ではなく、体幹部から脚全体を動かす方向に変わり、それが走り方に反映されてきていると思います。実際、海外のトップ選手を含め、フラットに接地する選手が多く見受けられます。選手によって接地に対するイメージは違うかもしれませんが、日本人選手でもフラットに接地する意識を持つ選手が増えてきていると思います。

―走り方が変化してきているとすれば、当然、桐生選手のようにフラットタイプのスパイクへの要望も高まるのでは?

菱川

インターハイなどで、指導者や選手にヒヤリングした際も、少しずつフラットソールに対するニーズも増えてきています。時代によって、それまで当たり前だったことが変化したり、それに合わせてスパイクなど道具も進化していくものだと思います。トレンドを的確にとらえ、選手のニーズに素早く・正確に応えるモノづくりを心掛けていきたいですね。 ジェットスプリントは、桐生選手専用スパイクをもとにトップ層のニーズに応える形で作り上げてきました。走り方やトレーニングが変化してきているのに合わせて、フラットソールタイプのスパイクが受け入れられていけば、これから中価格帯や練習用のモデルへと広がっていく可能性はあります。

―これまでのソールに角度のあるスパイクからフラットタイプのモデルの二本柱になっていくかもしれませんね。
桐生選手が話すように、普段の練習からそうしたフラットモデルを使用することで(桐生選手はアップシューズもフラットなタイプを使用)、走りの感覚も磨かれていくことも考えられます。

小林

スプリント技術はある程度完成されてきており、やれるものはすごく限られてきています。100分の1秒を競う世界ですので、今後は、使用する道具のこうした細かな部分も記録向上の重要なカギを握っているといえ、普段の練習から動きや感覚にマッチしたシューズを使用することもメリットのひとつではないでしょうか。