高いレベルのパフォーマンスを求める選手のために生まれたGOLDSTAGEシリーズ。

「少しでも遠くへ飛ばしたい」「1秒でも速く走りたい」そんな選手たちの声に応えるため、アシックススポーツ工学研究所でプレー時の動作を科学的に分析、アシックスアスリートの意見も取り入れて開発されたシリーズです。

野球経験者でGOLDSTAGEシリーズのスパイクの商品企画を担当する瀬谷学と、開発担当の小島優俊が、シリーズの特徴と、塁間のスピードを追求するプレーヤーへ向けたスパイクGOLDSTAGE I-PRO MA2のこだわりを解説します。

アシックスの野球用品とは?

GOLDSTAGEシリーズのスパイクの企画担当・瀬谷学(左)と開発担当・小島優俊(右)。野球経験者の観点も交えながらアシックスの野球用具の開発に携わっている。

――GOLDSTAGEは、より高みを目指す選手や中高部活生のために作られたシリーズということですが、野球において道具が選手に与える影響は大きいのでしょうか?

瀬谷学(以下、瀬谷) 野球は他のスポーツに比べて、多くの用具を使う競技です。選手たちが目指すプレーを実現するためには、もちろん選手の努力が大切ですが、目指すプレーにより近づけるようサポートするのが用具だと思っています。

――2012年にGOLDSTAGEシリーズが発売されて、その後、上位シリーズのGOLDSTAGE I-PROができました。上位シリーズが生まれたのはなぜでしょう?

瀬谷 GOLDSTAGEが支持を得るなかで、自分のプレースタイルや、自分が目指すプレーに合った用具を使用したいと、こだわりを持つ選手が増えてきました。そこで選手をより強力にサポートできるアシックススポーツ工学研究所(ISS)が追求した先進の技術、知見、知識を駆使し先進的な製品としてGOLDSTAGE I-PROが生まれました。

――GOLDSTAGE I-PRO シリーズはアシックススポーツ工学研究所での研究結果を反映しているとのことですが、どんな研究をしたのでしょう?

小島優俊(以下、小島) 例えば、盗塁で静止状態からスピードに乗るまでに重心がどう移動するのか。アッパーがどのように変形するのかなどを細かく分解して調べました。そのデータを元に「ソールのこの部分は硬い方がいい」、「アッパーのこの部分はやわらかくする」など、商品に落とし込んでいます。

「勝負の27m」を速く走るためのスパイク

GOLDSTAGE i-Pro MA2

――その結果、誕生したのが、スパイクのGOLDSTAGE I-PRO MA2ですね。

瀬谷 はい。中高生からのリクエストで圧倒的に多いのが「速く走りたい」という声です。ただ、“速く走る”と言っても、100mをまっすぐ速く走りたいわけではなく、塁間を速く走るためのスパイクが求められているわけです。そこで約27mの塁間を速く走るためのスパイクをコンセプトに開発がスタートしました。

――なぜ27m?

瀬谷 2020年のプロ野球年間打者成績を調べると、二塁打以上は約7%しかありませんでした。一方、シングルヒットは約18%、凡打は約52%です。つまり一塁までの約27mを速く走れれば、凡打をヒットにする可能性が高まるということ。もちろん盗塁成功率も上がります。勝負の多くは27mで決まるんです。

――なるほど。では実際に速く走るためにどんな機能を搭載したのでしょうか?

小島 まず、27mという短い距離を速く走るためには、瞬時に最高速度に到達する必要があります。そうなると大切になるのはスタートです。そこで、停止した状態からの加速のしやすさにこだわりました。盗塁のときは、最初に横に蹴り出してから、真っ直ぐに前を向いて走ります。靴底を見てもらうと分かるのですが、斜め横方向へ足をねじりやすいように、かかとから小指方向に向かって斜めに剛性が上がるよう樹脂厚を上げてバーを作っています。またスタートから走り始めの重心移動がスムーズに行えるよう、中足部から爪先付近にかけて徐々に剛性が低くなるよう(曲がりやすくなるよう)に樹脂の厚みを変えました。

重心移動や足の動かしやすさを踏まえて設計されたソール
重心移動や足の動かしやすさを踏まえて設計されたソール。ここにもアシックススポーツ工学研究所の知見が凝縮されている。

瀬谷 もうひとつこだわったのが靴の軽さです。現役時代の私もそうだったのですが、軽いスパイク=スピードが出ると考えている選手が多いんです。

小島 瀬谷から大幅な重量ダウンを相談されて、これはすごく苦労しました。軽くするだけなら、いくらでもできるんです。ただ、軽くすることが目的ではなく、速く走るのが目的ですから、サポート機能は削れない。多くのサンプルを作製し、アシックスアスリートの意見も取り入れ、やっと機能性と軽さを両立することができました

瀬谷 参考値ですが、前のモデルより30~40g(26.5cm 片足での比較)も軽くなったんですよね?

小島 はい。軽くするためにまず金具の形状を見直しました。また、全部メッシュにすると耐久性がなくなってしまうので、軽量な人工皮革材を使用して、軽量化と履き心地のやわらかさを実現し、力がかかりやすい部分にはサポートを入れ、外に力が流れないように補強をしています。

――開発から商品化までに2年以上かかったそうですね。評判はいかがですか?

小島 履いた瞬間に軽量感やフィット感を実感してくれたようで、試し履きしてもらった選手たちからは「すごくいいですね!」と好評でした。

走攻守、全てに関わるのがスパイクだ。

GOLDSTAGE i-Pro MA2

――それはすごい進化ですね。ところでお二人とも学生時代は野球をやっていたということですが、経験者として、スパイクのスペシャリストとして、中高生にアドバイスがあれば教えてください。

小島 僕の現役時代を振り返ってみたとき、バットやグローブはこだわっても、スパイクを重視する選手は少なかったように思います。でも走攻守、全てに関わるのがスパイクと考えると、野球用具の中でも特に大事だと考えています。

瀬谷 今回は走塁でのスピードを重視したスパイクをご紹介しましたが、本来は自分が目指すプレースタイルに合ったスパイクを選ぶ事が大事だと思っています。例えば大柄な体格のパワフルな選手でしたら、走塁でのスピードを重視するよりも投打のバランスを重視し安心してパワーを発揮できる安定感に優れたスパイクが向いている場合があります。また、中高生に限らず、スパイクのサイズ選びを間違えている選手が多いと感じます。特に「自分の足は幅広だ」と思っている選手が多いのですが、実際に計測を行うと6割ぐらいの選手が間違っているように感じます。ショップによっては足のサイズを測ることもできるかと思います。正しいサイズを知った上で、試し履きをして、自分のサイズに合うスパイクを選んで、より目指すプレーに近づいてもらいたいと思っています。

もっと速く。もっと強く。最新技術を追求し新たなステージへ。
GOLDSTAGE(ゴールドステージ)特設サイト。

GOLDSTAGEシリーズ スパイクについてはこちら。

Photo:Kenta Terunuma
TEXT:Junko Hayashida(MO'O)