ジェットスプリント、あらわる!

足裏全体で地面をとらえ、加速するスピード。スプリンターがイメージした走りを具現化するのは、反りを抑えたフラットソールと軽量でバネのようなアッパー。

トップスプリンターの走りを研究して生まれた『ジェットスプリント』。ジェット級のパワーが、一直線に空気を切り裂く。

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反りを抑えたフラットソール

ソールの反りを抑えたフラット構造により、足裏全体で地面をとらえて加速する。
蹴り出し時に、より大きな推進力を発揮できるようサポート。

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軽量で横ぶれを抑えるアッパー構造

軽量でバネのような性質をもつ『HL-0 メッシュ』を採用。
縫製箇所を極力減らすことで優れたフィット性を実現。

スパイク研究者たちの新たな挑戦

これまでの足の甲から指先にかけて角度のついたスパイクから、
桐生選手専用スパイクを参考に足裏全体で地面をとらえる フラットソールを採用したジェットスプリント。
その違い、特長について、バイオメカニクス(走法分析)の研究者、桐生選手専用スパイク、
ジェットスプリントの開発に携わった担当者の話を交えながら解説する。

※2019年6月現在

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足裏全体で捉える “フラット走法”

―フラット走法について教えてください。

小林

桐生選手に限らず短距離のトップ選手は、当然のことながら地面反力は大きくなります。スピードが上がれば上がるほど、つま先だけで接地していては耐えられないことになり、フラット接地を意識する・しないに関わらず結果的に、足裏全体でとらえていることになります。これがフラット走法と呼ばれるものです。スピードはストライドとピッチの掛け算で決まります。桐生選手の場合、ピッチは10秒0台の時と変わらないけれどもストライドが伸びたことでタイムが向上しています。
それは接地の際、地面からもらう反力が大きくなっているということであり、接地の感覚(同じ接地の時間内により大きなパワーを地面からもらう動き)がより磨かれた結果だと言えます。9秒台時を含め2017年シーズンを通して、そうした動きができていたことがデータからも示されています。


接地の安定を高次元でサポート

―これまでのソールに角度のあるスパイクとジェットスプリントのようにフラットなタイプとの違いは?

田﨑

これまでマック式に代表されるように、つま先立ちで腰を高い位置で保つ走り方、指導が主流でした。短い接地時間、素早い切り返し(速いピッチ)を意識したつま先(フロント)接地と呼ばれる走法です。そうした動き・走り方をサポートする形でスパイクの設計もされてきました。桐生選手の場合、高3時に10秒01を出した時は、まだソールに角度のついたスパイクを使用していましたが、それだと本人いわく接地の感覚が“点”になってしまい、大きなパワー、推進力が得られないということで、“面”でとらえることができる “ぺったんこな”ソールにしてほしいという要望が聞かれるようになりました。金丸祐三選手(大塚製薬)なども角度のあるソールだと「自分の走り以上のものが出てしまい、感覚が違ってくる」と表現し、フラットに近いソールを使っています。

小林

日本人は、海外の選手と筋力や骨格などに違いがあり、ストライドよりピッチを生かした走りのタイプになります。高身長で筋力がある外国人選手の場合(例えば、ジャマイカなどの選手は、アキレス腱が長く、ふくらはぎの筋肉もヒザよりの高い位置に付く傾向があるなど)、ピッチ型の選手と比べ接地時間も長く、ストライドが大きい走りとなります。いずれのタイプも、トップ選手の場合、接地が安定していることで地面から大きな反力をもらい、それを推進力に変えていると言えます。

田﨑

桐生選手から足裏全体を使いたいという要望がありソールをフラット(上下・反りの角度、左右・内外の傾き<ラウンド>共にフラット)にし、さらに自分の感覚と地面との距離をなくしたい(隙間をつくらずダイレクトに感じたい)ということだったので、従来よりもソールを薄くし突起物などもできるだけ少なくしました。薄くしたうえでトップ選手が生み出すパワーに耐えるだけの強度を保つようにするために新たな技術が必要でした。

菱川

これまではソールに角度がある形状で足入れ、フィット感を合わせてきました。角度のあるタイプとフラットなモデルでは、当然足入れ感、フィット感なども違ってきます。サイズ感を含め、どうフィットさせるかという点は特に工夫が必要でした。

小林

コンマ何秒の世界ですがトップ選手でも接地の際、やや小指側から入り母指球へ抜けていく選手が多いように思います。ですが映像を見ても桐生選手は比較的、フラットに接地しています。

菱川

ジェットスプリントもフラットモデルとはいえ、少し小指球部にラウンドを付けることで接地がスムーズになるよう工夫しています。さらにパワーを逃さぬよう、ブレを抑えてしっかり足にフィットし、かつ軽量化を実現するためアッパー部分の素材にもこれまでにない工夫を施し、高次元で足との一体感を高めています。


時代と共に変化する走法、
指導法にマッチしたスパイクづくり

―桐生選手も話しているように、フラットモデルを希望する選手も増えているようですが

小林

指導方針なども含め、少しずつ走りのイメージ、動きづくり、トレーニングそのものも変化し、桐生選手に代表されるような走り方、動きが主流になってきています。近年では一歩一歩しっかり乗り込んでいく走り方に変化してきており、指導のトレンドとしても、末端への意識ではなく、体幹部から脚全体を動かす方向に変わり、それが走り方に反映されてきていると思います。実際、海外のトップ選手を含め、フラットに接地する選手が多く見受けられます。選手によって接地に対するイメージは違うかもしれませんが、日本人選手でもフラットに接地する意識を持つ選手が増えてきていると思います。

―走り方が変化してきているとすれば、当然、桐生選手のようにフラットタイプのスパイクへの要望も高まるのでは?

菱川

インターハイなどで、指導者や選手にヒヤリングした際も、少しずつフラットソールに対するニーズも増えてきています。時代によって、それまで当たり前だったことが変化したり、それに合わせてスパイクなど道具も進化していくものだと思います。トレンドを的確にとらえ、選手のニーズに素早く・正確に応えるモノづくりを心掛けていきたいですね。 ジェットスプリントは、桐生選手専用スパイクをもとにトップ層のニーズに応える形で作り上げてきました。走り方やトレーニングが変化してきているのに合わせて、フラットソールタイプのスパイクが受け入れられていけば、これから中価格帯や練習用のモデルへと広がっていく可能性はあります。

―これまでのソールに角度のあるスパイクからフラットタイプのモデルの二本柱になっていくかもしれませんね。 
桐生選手が話すように、普段の練習からそうしたフラットモデルを使用することで(桐生選手はアップシューズもフラットなタイプを使用)、走りの感覚も磨かれていくことも考えられます。

小林

スプリント技術はある程度完成されてきており、やれるものはすごく限られてきています。100分の1秒を競う世界ですので、今後は、使用する道具のこうした細かな部分も記録向上の重要なカギを握っているといえ、普段の練習から動きや感覚にマッチしたシューズを使用することもメリットのひとつではないでしょうか。