サッカーの世界観を他にはないアプローチで編集

サッカーは世界中でプレーされているスポーツ。間もなく開催の、4年に1度のイベントを控え盛り上がりをみせるところだが、老若男女問わず知らない人がいないくらい身近なものなのではないだろうか。「都市部に偏っているわけではなく、日本はもちろん世界中のどこにでもチームがあることで、みんながフラットに楽しめる環境にあります。だからこそサッカーに可能性を感じています」と語るのは、『SHUKYU Magazine』の大神崇編集長だ。

SHUKYU Magazine

2015年に創刊した『SHUKYU Magazine』は、サッカーの裏にある知られざる背景や歴史をはじめ、建築やアート・写真など多岐に渡る切り口から、サッカーの世界観を他にはないアプローチで編集している雑誌である。編集長を務める大神崇さんは、学生時代にサッカーを実際にプレーしていた経験を持つ。24歳の時に原宿にあるオルタナティブスペースVACANTの創設に参加し、イベントの企画や運営を手がけていた大神さん。転機が訪れたのは28歳だった。

 

「学生時代に熱中していたサッカーで何かできないかと思ったんです。サッカー選手の平均引退年齢は26歳で、野球選手よりもずっと若いんですよ。当時すでにその年齢を過ぎていた自分が注目したのは引退したサッカー選手でした。そこでブックディレクター・編集者の山口博之さんと一緒に始めたのが、引退した選手が自身のセカンドキャリアについて語るトークイベントです。それを続けていくうちに30歳という節目を迎えて、新しいチャレンジを考えたときにイベントではないことを始めたいと思って。サッカーに関するイベントをやってきた流れもあるから、サッカー雑誌をつくろうかな、と。自分にしかできないことをやるのは今しかないかな、と思って始めたのがきっかけですね。」

 

大神さん

白いDS LIGHTシリーズを愛用していた大神さん、気になる選手は?

今でもフットサルをよくやるという大神さん。プレーヤーから始まり、一度はサッカーを離れた後にイベントを企画するなど、さまざまな経験を積む中でサッカーを観る視点に変化が出てきたという。期間限定で渋谷・ヒカリエ8Fのショーケース「aiiima」にオープンしていた『SHUKYU Magazine』の公開編集部&ショップを訪ね、サッカーの魅力を伺った。

 

――サッカー部時代、印象に残っているエピソードはありますか?

高校時代に愛用していたスパイクがアシックスのDS LIGHTシリーズだったんです。日本のブランドということもあるのかもしれませんが、海外ブランドのものと比較しても自分の足にフィットしていて。ちょうど黒いスパイクが全盛だった時代に白いスパイクが登場してきたときで、黒以外のスパイクを初めて買いました。今でこそさまざまカラーバリエーションが当たり前ですが、当時は珍しかった白いDS LIGHTシリーズを履くことで気分を上げていましたね。

 

――6月8日にアシックスの契約選手でもある乾貴士選手と大迫勇也選手の着用モデルでもあるDS LIGHTシリーズの新作が発売されますが、大神さんは乾選手と大迫選手の特徴をどのように捉えていますか?

二人とも高校時代から全国的に注目されている選手ですよね。実はセレッソ大阪ファンなので、クラブ出身選手である乾選手をインタビューしてみたいとずっと思っていて。日本人選手の中で一番楽しそうにプレーしている印象なので、あの心からサッカーを楽しんでいる感じはどこに由来しているのか興味があります。あとは、とにかくうまい。これまで日本人選手にとって鬼門とされていたスペインであれだけの活躍をされていて素晴らしいですよね。

 

大迫選手は所属していた1.FCケルンがドイツ2部に降格してしまったけど、名門クラブであるブレーメンに移籍したことが注目選手であることを証明していますよね。FWというポジション柄、屈強なドイツの選手と対峙する場面が多いですが、しっかり渡り合えているのは日々のトレーニングの賜物だと思います。ストライカー、ポストプレーヤーとしてもユーティリティの高いフォワードで、チームにいると頼もしい存在だと思います。
二人とも来シーズンから新しいクラブで挑戦が始まりますが、これまでと変わらず応援したいです。

 

過去のユニフォーム
公開編集部には過去のユニフォームがずらり。手前がASICS製。
4号目のユース特集
4号目のユース特集内から。「思い出のサッカーシューズ」企画。ASICSのスパイク「JANUS F98」も紹介されていました。

 

地元とクラブチームの関係に注目。街全体を楽しんでもらいたい

――アーティストの平山昌尚さんとTシャツを作成したり、ファッションブランドの<エンダースキーマ>とレザー製のレッドカードとイエローカードを製作したり、インパクトがあるコラボレーションも『SHUKYU Magazine』らしいですよね。

毎号の構成として、前半は特集テーマに合わせたインタビュー記事を中心に真面目な反面、後半は普段サッカーと縁のない人とサッカーを掛け合わせてちょっとした遊びを取り入れることを意識しています。

 

SHUKYU Magazine1
SHUKYU Magazine2
SHUKYU Magazine3
SHUKYU Magazine4

 

――メディアとしてサッカーと関わるようになった大神さんから見た、サッカーの魅力や醍醐味について教えてください。

プレーヤーの頃は単純に試合しか観ていませんでしたが、『SHUKYU Magazine』をつくるようになってから、試合を観に行っても観客やスタジアムグルメなど、周辺で起こっている物事を意識するようになりました。今年、あるJ3クラブのイヤーブックをつくらせていただきました。イヤーブックってそのクラブのサポーターが買うのが大前提で、基本は選手やクラブ内の情報が載っているのですが、クラブの方に話を聞いてみると、アウェイからわざわざ来たアウェイチームのサポーターもお土産代わりに買って帰っていることを知って。せっかくサッカーを観に来たんだったら、街自体を楽しんでもらえるようなコンテンツをつくろうと考えました。

 

――試合の前後の時間を有効活用するという視点なんですね。

もちろん勝敗は大きいと思いますが、サッカーがきっかけで行った街で美味しいものを食べたり、いろんな場所へ行ってそこで思い出ができたら、また次も行きたいよねって思ってもらえるきっかけになるかもしれないじゃないですか。なので、誌面の半分はサッカーではなく、その街のおすすめスポットや面白い活動をしている人を取り上げています。駅からスタジアムまでの道のりで感じる地元とクラブチームの関係性にも注目していて、そういう視点で改めて試合を見てもらうと、気づくこともあったりして面白いと思います。

 

――最後に、『SHUKYU Magazine』の今後のビジョンを聞かせてください。

『SHUKYU Magazine』を無理のないペースで出し続けながら、いつかこの公開編集部とポップアップショップのような場所を常設でつくりたいですね。イベントスペースを運営していた経験から、場所があることのありがたみを感じていて。日本にはまだまだ気軽にサッカーに触れられる場所がないと感じるので、気軽に足を運べて、かつサッカーの興味が広がるようなスペースをつくれたらいいなと思います。

大神崇

大神崇(おおがみたかし)

1984年大阪生まれ。原宿のオルタナティブスペースVACANTの創設に携わった後、2016年に独立。サッカーカルチャーマガジン『SHUKYU Magazine』を創刊し、編集長を務めている。


DS LIGHT シリーズ

『SHUKYU Magazine』ウェブサイト

Interview&edit:Shota Kato
Text : Kaori Takayama
Photo:Keta Tamamura