ラグビーはトラストゲーム。僕らが立ち向かっていく姿に注目してほしい

2019年9月に開催が迫るラグビーワールドカップ2019日本大会。2015年のイングランド大会以上に、日本国内でラグビーに注目が集まるのは間違いない。大きな盛り上がりが予測されるなか、日本代表のキャプテンを務めるリーチマイケル選手にラグビーの醍醐味や観戦ポイント、そして大会へかける想いを聞いた。

「ぜひ僕らが対戦相手に立ち向かっていく姿に注目していただきたいですね。ボディコンタクトでビビらない。小さい人が大きい人に飛びつくとか、そういったところが一番の見どころです。相当なメンタルが必要で、勇気が要るんです」

自分よりも屈強な相手にタックルするのは恐怖心が先行して、立ち向かおうとしてもなかなかできない印象がある。それを克服するためにはどうすればいいのだろうか。

「タックルができない人はずっとできないです。アドバイスをするとすれば、覚悟を決めるしかないですね。チームにコミットして、自分と仲間たちを信じること。タックルはダミー練習に限界があるので、生身の人間と100%やらないと意味がありません。ラグビーはトラストゲームなので、僕らのなかでは、タックルができる選手が、本当の意味で信頼できる選手です」

reactiveのマインドを胸に、ワールドカップでは絶対に優勝を

ワールドカップイングランド大会で大きな自信を得た日本代表チームは、その後もテストマッチや公式戦を通じて、世界の強豪国と好ゲームを繰り広げてきた。リーチ選手は今の日本代表チームの特徴について次のように語る。

「スピード、忍耐力、スキル、独特のゲームプラン。特にスキルはものすごく高いです。いまはこれまで苦手だったことをゲームプランのど真ん中に置いて、キックプレーを強化しています。普段の日本代表の作戦やゲームプランで対戦相手を想定しているので、データにはないことをいきなり試合で取り入れています。つまり、僕らも練習ではやっていないことをあえて取り入れて、本番で判断力を養っているんです。これはワールドカップへのテストマッチが続く今だからできることですね。2015年のときはキックはせず、ひたすらタックルをしていました。今は3回タックルだとしたら、1回はキックという割合でトレーニングをしています」

キックを取り入れたことで長い距離を走ることになる。その分、ピッチの中で動く距離がこれまでの試合と比べても伸び、それに応じて日本代表も対戦相手も体力の消耗が増えた。

「ラグビーは前後半80分の中でプレーしている時間が平均25分あります。それを40分に増やすことで相手の体力を消耗させるんです。しんどい状況になれば人間は楽をしたいと思うので、そこでタックルが刺さるんですよ」

2018年11月のテストマッチで、日本代表はニュージーランド代表に31-69、イングランド代表に15-35で敗れ、ロシア代表に32-27で勝利した。ワールドカップ開催まで1年を切ったいま、リーチ選手はチームに対してある言葉を投げかけて意思の統一を意識づけている。

「“reactive”ですね。どんなシーンでも素早く対応できるように、つねに何かが起こると予測して行動することを今は意識しています。オールブラックスをはじめ世界トップレベルの一歩の速さはとても速いので、一歩遅れたら命取りになってしまう。世界のトッププレーヤーたちは、reactiveのマインドをスタンダードとして持っていて、それで勝ち続けています。11月のテストマッチで勝てなかった理由は試合中の判断力にありました。判断力が世界トップレベルで戦えるチームになってくれば、それがまた自信につながっていきます。オールブラックスに69点を取られ、イングランドには前半は勝ちましたが後半は負けました。ロシア戦は苦しい前半を乗り越えて勝てたので、それぞれのテストマッチにいい発見がありました。おそらく次に試合をするときはまた空気が変わると思います。僕らはまだまだ強くなれる」

「とにかく強いチームをつくることにしか興味がない」と意気込むリーチ選手。勝つことが自分たちと応援してくれる人々への一番のメッセージになると信じている。

「試合ではヤジには大体振り向きます(笑)。『頼むよ!』と一言かけられるとうれしいです。ワールドカップは勝たないと意味がない。だから絶対に優勝するという気持ちです。僕はベスト8という言葉が好きではないので、勝ち続けるメンタリティを持ち続けたい。日本人の強さとチームワークを世界に見せたいですね」


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Text:Shota Kato   Photo:Tetsuya Yamakawa