いよいよ8月4日に開幕を迎える「ロンドン世界陸上」。そんな陸上競技の最高峰イベントの魅力と、陸上競技というスポーツそのものの楽しさについて、名物Twitterアカウントの西本武司さん(@EKIDEN_News)、駅伝マニアさん(@ekiden_mania)、ポールさん(@m_paul_paul)が熱量を注いで対談を繰り広げてきた。ラストとなる後編の話題は、スタジアムにおける応援や2020年の「東京オリンピック」まで言及。熱狂的ファンたちのトーク、そこにはあふれるほどの陸上愛を垣間見た。

世界の言語で一斉に「がんばれ」という声援が耳に入る

では、本題の「ロンドン世界陸上」について話していきましょう。世界陸上はサッカーでいうワールドカップにあたる大会ですが、皆さんが思うその楽しさを教えてください。

ポール オリンピックの4年という選手がモチベーションを作りづらいサイクルに対して、世界陸上は2年ごとというスパンなんです。オリンピックは3回も出場すればレジェンドになりますが、室伏広治選手はもう世界陸上に10回近くも出場していて。そういった出場するためのモチベーションの維持になり得るスパンが一番のミソですかね。

マニア 僕は中学生の頃から夜通し世界陸上の中継を見てきたので、それが染み付いていますね。実際に会場を訪れたのは大阪と北京くらいですが、その魅力を他の大会と比べると、好きすぎるが故になかなか言葉にできないものがあります(苦笑)。西本さんと世界陸上北京を観に行ったら、会場ではとんでもない盛り上がりが起きていたんです。

西本 これまでEKIDEN Newsでは渋谷のスポーツバーでパブリックビューイングを開催していたんです。最大200人くらい集まって、それはそれで面白いけど、やっぱり世界陸上の現場に行かねばと思って、マニアさんと北京の全日程のチケットを買いました。現地では一軒家を借りて、そこで共同生活しながら会場を往復していましたね。オリンピックにはお祭り要素がありますけど、世界陸上には、世界の陸上イベントを転戦する純粋な陸上ファンが世界中から集まっているという感じがします。彼らは競技の見方を熟知していて。テレビでは気がつかなかったことは他にもあって、それは声援なんですよ。

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どういうことですか?

西本 テレビだと実況と解説を優先するが故に、会場の声援がほぼ入ってこないんですね。でも、実はとてつもないボリュームで、陸上が他のスポーツと大きく違うのは、観客全員が一斉に静寂になる瞬間があるんです。そこから爆発した時の声援が本当にすごい。世界の言語で一斉に「がんばれ」という声援が耳に入る体験も滅多にないですよね。

マニア ラップタイムを計っていても、「ラスト一周にこんなに速く走れるのか」という信じられない数字が出てくるんです。やっぱり現地に行くとすごいなって。

西本 ならば、我々はなるべくTBSの陰に隠れてその感動を伝えなきゃいけないと(笑)。僕らの中では国内組と国外組に分かれているんですけど、国内組はパブリックビューイングに集まって、ポールさんとかにその仕切りをやってもらっていて。イベントの最後には恒例行事として、全員で肩を組んで織田裕二さんの「All my treasures」を歌うという(笑)。世界陸上をきっかけに織田裕二さんを他人事だと思えなくなっていますね。

日本における「ロンドン世界陸上」の盛り上がりはどうなると予想していますか?

西本 今回は現地観戦する人が増えそうですね。さすがに全日程を観戦する強者はなかなかいないと思いますが、「私も行きます」という声がちらほら届いていて。僕は普段ラジオ局に勤務しているんですが、世界陸上期間中は代打を使って2週間休みます(笑)。

ポール 僕は今回もパブリックビューイングで現地組と連携しながらの観戦ですね。

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テレビ中継が追いきれないディテールを、EKIDEN NewsとEKIDEN_MANIAがどこまでカバーするのか楽しみです。

西本 例えば10000mがスタートすると、だいたいやり投げも始まるんですよ。そうすると、10000mの30分弱の間に空白が出てしまうんですね。そこを伝えられるのは僕らしかいない。世界陸上ではトップ選手を映すので、長距離トラック競技だと日本人選手の位置がわからないことが多いのです。5000m予選などは生放送もありませんからね。客席からラップタイムや位置取りをツイートすることで、日本のファンにも伝えることができる。そういう意味で、陸上はSNSと相性が良いんです。

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劇的に変わった陸上を取り巻く環境

「ロンドン世界陸上」では、日本の短距離勢をはじめホットな話題がありますが、皆さんが思う見所を教えてください。

マニア 世界陸上の参加資格は、標準記録を突破している選手でないと難しいことを知ってほしいです。

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ポール 僕もマニアさんと同じで、日本選手権で勝っても世界陸上に出られない選手がいるんですよね。日本人の投擲選手が全種目に出場できたのは2007年の大阪の時で、それは自国開催で全種目に国内の選手が一人ずつ出られるというアドバンテージがあったんです。できれば、今回は全員が標準記録を突破してほしいなって。

西本 僕は短距離のサニブラウンですね。彼はルックスも相まって海外選手に見劣りしないんです。北京の時、どの日本人選手も音楽を聴いて自分の世界をつくっているなか、サニブラウンだけは違ったんですよ。当時、高校生なのに、ジャスティン・ガトリンと談笑しながらトラックに現れて。雰囲気に飲まれずに本来の実力を発揮できる選手が少ないなか、彼には期待してしまう。しかも彼は今オランダで練習していて、ヨーロッパの空気を吸って現地入りするということでも注目しています。

マニア 余談ですが、Twitterでは「会場のコーラがぬるい」という情報まで飛び交っているので、それを追い続けるのも楽しみのひとつです(笑)。

いま、頭を悩ませているのが、男子3000m障害の予選が朝10時5分スタートなんですが、その50分後に男子マラソンがスタートするんですね。スタジアムとマラソンスタートのロンドンブリッジまでどうやって移動すれば、両方観ることができるのか?ということ。自然とロンドンの地理にも詳しくなってきました。

西本 世界中の選手と各国の陸連のアカウントをフォローしておくのもオススメです。それぞれの盛り上がりポイントを把握することができるので、各国の選手の背景が見えてくると思い入れも生まれます。活躍した選手に「おめでとう!」と声をかけて、選手との新しい関わり方を世界陸上で作るべきじゃないかなって。日本にもそうやって応援するファンがいれば、東京オリンピックで各国の選手が日本に特別な意識を持ってくれると思います。

高橋 選手の結果が良くない時も、ファンの方たちが良いムードを作ってくれているので、僕らは応援の文化を次につなげていきたいと思っています。そういう意味では、今回の世界陸上がロンドン開催というのはすごくプラス。ヨーロッパは陸上を観る目が肥えているので、そういう文化も伝わって、2020年の東京オリンピックを競技場に観に行く人が増えて一緒に盛り上げてくれるとうれしいです。

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最後に聞きますが、皆さんはコンスタント、かつストイックに各大会を追ってきたことで、日本の陸上競技を取り巻く環境は変わってきていると感じますか?

ポール 日本選手権では、自然とスタンディングオベーションが起きたりして。世界レベルに近いリアクションを日本もできるようになりつつあるんだなって感じています。

マニア YouTubeで過去の日本選手権の映像を見ると、中学校の県大会のような雰囲気なんですよね。でも、最近ではBGMやアナウンスの演出があったりと、みんなが関心を持つことで分かりやすいエンターテインメントになってきている気がします。

西本 先日、末続慎吾さんが今年の日本選手権で200m予選を走ったときに、感慨深くスタンドを眺めながら、「こんなにたくさんのお客さんがスタンドにいるとは」って発言したんです。2003年の世界陸上パリで彼は200mで銅メダルを獲りましたが、当時の日本選手権が行われた日産スタジアムのスタンドはガラガラでした。だから、この14年で陸上を取り巻く環境が劇的に変わったんだなって。間違いなく陸上がエンターテインメントとして面白くなっている。そこに気づいてくれる人たちは、きっと東京オリンピックまでにかなり増えているはずですよ。

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駅伝マニア(エキデンマニア@ekiden_mania

神奈川県出身、自営業。小学生の頃、マラソン大会で優勝し陸上に目覚める。5000m14分29秒、フルマラソン2時間59分。

ポール@m_paul_paul

長野県出身、住宅関係の企業に勤めるサラリーマン。指定校推薦枠で大学に推薦入学するも、箱根駅伝に出る&投擲が強い大学じゃなきゃ嫌だという理由から辞め、違う大学に再入学。やり投げ66m。

西本武司(ニシモトタケシ)@EKIDEN_News

福岡県出身、渋谷のラジオ制作部長。メタボ対策ではじめたジョギングがきっかけで箱根駅伝と陸上にハマってしまう。フルマラソン 3時間12分。


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TEXT : Shota Kato PHOTO : Tetsuya Yamakawa