初心者ランナーだけでなく、何度も大会に出てきたベテランランナーでも、久々のレースとなると「どんな準備をすればいいんだっけ?」と悩む方が多いでしょう。

そこで第二回では、アシックスランニングクラブの小谷浩コーチ、ランニングシューズ担当の鈴木利奈、アパレルイクイップメント担当の島田亜生子とともに、大会前日の準備や、レベル別に用意したい大会当日の持ち物などをおさらいします。

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大会前日までにコーディネートは最低3パターン用意しよう

(左から) アパレルイクイップメント担当の島田亜生子、ランニングシューズ担当の鈴木利奈、アシックスランニングクラブの小谷浩コーチ

――マラソン大会が数年ぶりに再開されて、多くのランナーが初心者のような気持ちで大会に臨むと思います。レースの感覚を忘れている方も多いと思うのですが、準備で気をつけることはありますか?

小谷 まず基本的に事前にできる準備は前日までに終えておきましょう。

例えば、マラソン大会は気象条件などよって、毎年大きく環境が変わります。暑い日のウエア、寒い日のウエア、雨が降る日のウエア、最低でも3パターンのコーディネートを事前に考えておいてほしいですね。大会前日になれば天気も分かりますから、その中から当日着るウエアを選んで、前日のうちにゼッケンをつけておきましょう。(ランニングウエア一覧)

島田 このときに安全ピンではなくゼッケンスナップがあると、お気に入りのウエアを傷つけなくてすみます。

小谷 そうですね。とにかく大会当日に余計なストレスを感じなくて済むように、前日までにできることは全部やっておきましょう。そして当日は時間に余裕を持って行動すること。もちろん皆さん余裕のあるスケジュールを組んでいると思いますが、それよりも30分早く行動すると慌てずにすみます。

【初心者】おすすめはアームウォーマーの活用

――初心者ランナーはどんな服装を選ぶといいでしょうか?

小谷 まず、初心者の方はあまりウエアを持っていないという方が多いと思います。そのため夏の練習で着ていたウエアを、秋冬の大会で着ようと思いがちなのですが、実は同じ半袖のTシャツでも、夏と冬では素材や機能性が異なるんですね。シーズンオフのウエアを着ると、気候とマッチせずに走っていて辛くなるので、まずは季節にあったウエアを選ぶことが大切です。

――同じ半袖でも全然違うんですね。では、どんなコーディネートをしたらいいのでしょう?

小谷 例えば東京マラソンでは、スタート地点は日陰で寒く、3km過ぎになると日差しがあたり、体も温まって、暑くなってきます。ところが後半は再びビルの影に入るので、ビル風も吹いてまた寒くなる。ランニングジャケットで防寒をしてもいいのですが、寒暖差を感じる度に脱ぎ着をするのは面倒ですよね。その点、半袖とアームウォーマーの組み合わせなら、暑くなったら手首まで下げて、寒くなったら元に戻すと簡単に調整できる。ストレスがないので、初心者の方にこそおすすめの組み合わせです。

島田 寒さ対策には、グローブも用意するといいと思います。ランニング用のグローブは軽くて薄いのに、保温性や吸汗速乾性などの機能もしっかりとしています。

小谷 グローブによってTシャツ1枚分くらい体感温度が変わると言われているので、軽装で走るアスリートも着用していますよね。軍手とかではなくて、ランニング用の機能があるものを選んでほしいですね。

【初心者】脚の負担を軽減するランニングタイツはロングタイプに

島田 脚への負担を軽減してくれるランニングタイツも必須ですよね。

小谷 初心者の方は脚全体をサポートしてくれるロングタイツを選ぶといいですね。重ね着をするならば、マルチポケットのついたパンツを重ねるとスマートフォンや補給食などの小物が収納できて便利です。タイツだけで走りたいという方はポーチリュックを合わせるといいでしょう。

マルチポケットのついたパンツ
マルチポケットのついたパンツ

島田 雨対策としてはポンチョを入れておくといいですよね。ランニング用のポンチョは軽くてコンパクトなので、荷物が嵩張る心配もありません。

小谷 僕はちょっとした雨や紫外線を防げるキャップを愛用しています。キャップも真夏用や冬用、はっ水加工を施したものや風を通しにくい素材など、いろいろな商品が出ているので、大会に合うものを選びたいですね。また、サングラスも集中力を高めたり、目から受ける疲労感を軽減するのに役立つので持っていた方がいいでしょう。

キャップとポンチョ
キャップポンチョ

【初心者】おすすめはGEL-KAYANO 29とGT-2000 10

――シューズは何を履いたらいいでしょう?

鈴木 初心者の方は練習からレースまで、基本的には同じシューズで良いと思います。第1回でもおすすめしましたが、完走を目指すランナーの方は「GEL-KAYANO 29」、サブ5レベルのランナーの方には「GT-2000 10」がおすすめです。またソールがすれていたり、クッション性がなくなっていたり、履き込んで古くなっていたら、レース前に買い替えた方が良いでしょう。できれば新品をいきなりレースで履くのではなく、練習で履いていただく方が足にも馴染むので良いと思います。

初心者におすすめのGEL-KAYANO 29GT-2000 10

小谷 コロナ禍で大きく変わったのが給水や給食です。感染症予防の観点から沿道の補給がどのようになるかわからないので、ジェルや補給食はしっかり準備しておきましょう。ただし、給食があったとしても、固形物は食べてからエネルギーに変わるまで時間がかかるので、エネルギージェルは必須です。目安は1時間ごとに1つ。サブ5なら4〜5個は用意しておきましょう。また初心者の方はレースを走る準備だけで終わってしまうことが多いのですが、走った後の準備もしておくことをおすすめします。絆創膏や汗拭きシート、靴ズレや股ズレを防ぐためのワセリン、湿布、回復を助けるアミノ酸系のドリンクやサプリなどがあるといいでしょう。
持ち物リストを作りましたので、前日までに忘れ物がないかチェックしてみてください。

【中・上級者】おすすめは膝上から膝下丈タイツ

――このリストはベテランランナーも活用できますね。中・上級者が久々の大会でパフォーマンスを高めるためにはどうしたらいいでしょう?

小谷 初心者の方には、フルレングスのロングタイツをおすすめしましたが、中・上級者の方は太もも周りのサポートがあれば十分。むしろサポートをしすぎると可動域が狭くなって動きづらくなるので、膝上から膝下丈のタイツを選ぶといいでしょう。

島田 中・上級者の方はすでにたくさんのウエアをお持ちだと思いますが、この3年で吸汗速乾性や軽量性、快適性などが向上するなど、ウエアも進化をしています。例えばアクティブリーズシリーズは、日本代表選手が着用したウエアを応用した機能が搭載されていて、ランニング時に体温が上昇しやすい場所や、汗をかきやすい部位などをアシックススポーツ工学研究所で科学的に分析して、ウエアがムレにくく快適に着用できるように設計されています。最新のウエアを取り入れることで、より快適に走れるようになるので、ぜひ試してほしいですね。

小谷 機能性だけでなく、ランニングウエアにもトレンドがあるので、数年前のコーディネートだと少し古く見えてしまうというのも覚えておいてください。例えば、数年前までは中・上級者のウエアといえば、ランシャツ&ランパンが定番でしたが、最近はトップアスリートの影響で、ランシャツ+ハーフレングスのタイツで走るスタイルが人気になってきています。新しいウエアを着るとモチベーションも上がるので、ぜひ最新のスタイルに挑戦してほしいですね。

【中・上級者】おすすめはNOVABLAST 3とMAGIC SPEED 2

――シューズも進化をしていますが、中・上級者は何を選べばいいでしょう?

小谷 第1回でも紹介しましたが、サブ4.5以上を目指すランナーには、跳ねるようなクッション性に優れた「NOVABLAST 3」や前への推進力を感じやすいカーボン搭載の「MAGIC SPEED 2」がおすすめです。

中・上級者におすすめのNOVABLAST 3MAGIC SPEED 2

小谷 僕もそうなのですが、中・上級者になるほど、久々の大会で自分がどれくらいで走れるのかが読めず、不安を感じている人が多いと思うんです。だからこそ頼れるものには頼って、事前の準備をしっかりとして、大会に臨んでほしいと思っています。

Photo:Tetsuya Fujimaki
Text:Junko Hayashida(MO'O)