健康のため、ダイエットのためにとランニングを始めたはいいものの、一人で続けていくって、意外と難しい…。モチベーションを保つにはアプリやランニングウォッチで自分の走りを記録する方法もありますが(詳しくはこちら)、同じ趣味をもつランニング仲間を見つけてみるのはいかがでしょうか。まわりに走っている人がいないという人にも、ランニング仲間の見つけ方やランニング仲間の魅力をランニングコーチ3人が紹介します。

教えてくれたのは、多くのランナーを見てきた3人のランニングコーチ!

今回、仲間と一緒に走る魅力を教えてくれたのは、ランニングイベントなどで数多くのランナーたちと一緒に走ってきた、アシックスのランニングコーチ3名です。

池田美穂(アシックスランニングクラブ コーチ)
大学時代は陸上部で800〜1,500mを経験。アシックス入社後に営業職を経て直営店のスタッフに異動。アシスタントの経験を積み、ランニングコーチとしての現在に至る。東京マラソンなどの市民マラソンのほか、国内外の多くのレースに出場。2019年秋に出産し、育休を取得。2021年春に仕事復帰したばかり。ママランナーとして愛娘との時間も大切にしながらランニングを再開。

高木智大(アシックスランニングクラブ コーチ・アシックス東京銀座勤務)
学生時代は野球部。スポーツ用品店のアルバイトでランニング売り場を担当したことがランニングとの出会い。同級生と参加した初めてのフルマラソンは約4時間30分。アシックスに入社後はアシックス東京銀座での接客・ランニングイベントでのコーチ・アシックスランニングラボの計測などを担当。最近、あまり外出ができないなかでランニングのためにもなると始めた筋トレにすっかりはまり、コンテストに出るほどに。なんとコンテスト出場時の体脂肪率は3%!

小谷 浩(アシックスランニングクラブ コーチ・アシックスラン東京丸の内勤務)
走り始めたのはなんと小学生! 陸上が盛んな兵庫県出身、環境に恵まれて大会にも出場し、中学~大学時代は陸上部に所属。社会人になってから数年のブランクを経て、ランニングを再開。アシックスに転職後は、ランニングコーチとしてビギナーから上級者まで幅広いランナーをサポート。現在も常に自分の過去を超えるべくランナーとしても日々挑戦中。4人のパパであり、子どもに追い抜かれないように奮闘中!

みんなランニング仲間ってどうやってつくっているの?どこで出会うの?

ランニング仲間

SNSを見ていると、ランニングの投稿があふれていて、ランニング仲間との交流や楽しそうな練習風景。私もランニング仲間が欲しい!そんな時はどうすれば良いのでしょうか。

――ASICSでは定期的にランニングイベントなどを開催していますが、イベントや練習会で出会って友だちになることもありますか?

小谷 よくありますよ! 1人で申し込む方もいます。何度か参加しているうちに、よく会う人同士で友だちになり、誘い合って同じイベントや大会にエントリーして楽しんでいる人もいます。中級~上級者の場合は目標タイムが近い人と仲良くなる傾向にあります。コロナ禍でイベントができなかった時期には、みなさん連絡を取り合って練習されていましたよ!

――なるほど! レベル別の練習会なら同じくらいの走力の人と出会えますね。まだ全然走れない……これから走り始めたい!という初心者の方もいますか?

小谷 もちろんです。ビギナー向けのイベントでは、シューズの履き方やストレッチから始めて、3kmくらいを走ったり歩いたりするので気軽に参加できます。ビギナーイベントから始めて、1年でフルマラソンを制限時間内に完走しちゃう人もいます。そういう経験をした人が、“自分も初心者から始めたから大丈夫!”とランニング仲間の輪を広げてくれます。最初は話しかけられてびっくりする人もいますが、そんな出会いをきっかけにランニングが続けられるようになったという人もいます。

――コーチ自身のランニング仲間はどんな人ですか?

小谷 社会人になって走らなくなった時に、妻は僕が走るのが好きなのに、走ってないことを不思議に思っていたようで妻から「ランニングにつきあって!」と言われて一緒に走るようになってランニングを再開しました。それをきっかけに習慣化してきた頃に、第一回の東京マラソン2007にエントリーしました。

――ご家族がランニング仲間ですね! 夫婦や親子で走るのも良いですね。高木コーチはいかがですか?

高木 僕は、学生時代のアルバイト仲間ですね。普段の練習は基本的に一人です。でも、当時一緒に走っていた仲間と今でも繋がっていて、誰かが大会にエントリーしたら「練習つきあってくれない?」といったふうにたまに一緒に走っています。

ランニング仲間とはどんな練習をしているの?

ランニング仲間

念願叶ってみつけたランニング仲間。一緒に走ろう!と誘ってみたいけど、どう声をかけよう?ランナー達は仲間とどんな練習をして、どんな楽しみ方をしているのでしょうか。

――コーチはランニング仲間と一緒に走る時は、どんな練習をしていますか?

高木 1人では難しいハードな練習を一緒にやることが多いですね。走る距離を伸ばしたい時、1人では途中でやめたくなってしまいますが、誰かと一緒なら続けられるんです。

池田 なかなか長く走れないビギナーにもおすすめです。先日、同僚の女性陣とみんなで走りに行きました。ほとんど走っていない人や、かなりブランクがある人達だったので、私がコースを作って、麻布十番でたい焼きを食べたり、和菓子屋さんでお茶をしたり。楽しい目的を決めてみんなで走るスタイルは、ショップのランニングイベントで仲良くなったランナーの方々も楽しんでいるようです。春ならお花見ラン、秋なら紅葉やイチョウ並木。冬ならイルミネーション!

――練習というよりも、仲間と一緒だからこそ楽しめる過ごし方ですね!

高木 誰かと一緒ならいつも走っていない場所を走ることができて気分も変わって楽しいんです。ベテランランナーは、ビギナーでも走りやすいコースや楽しいコースをたくさん知っていることも多いので、色んなレベルの人と走ってみるといいと思います。

池田 普段は同じコースばかりでマンネリになりがちですもんね。ランニングを続けるにはランニングコースのバリエーションも大切。

小谷 練習会の参加者からよく聞く話なのですが、1人で走っていると「早く終わらせたい」と思ってしまって、走っているうちにどんどんペースが上がってしまい、きつくて距離も伸びないそうです。誰かと一緒に走るとゆっくり走れるからという理由で、ゆっくり長めに走るナイトランに参加する人もいます。

――走ることが好きでも、なぜかちょっと面倒だったり億劫になったりすることはランニングあるあるかもしれませんね。

小谷 冬は寒すぎて走る気になれない!夏は暑すぎて走る気になれない!

池田 春は花粉で走る気になれない!走らない言い訳をさがしてしまうんですよね。

小谷 そういう時は、誰かと走る約束をするのがいいですね!

ランニング仲間はリアルだけじゃない?オンラインで繋がることでモチベーションUPに!

オンラインで繋がる

大人数で集まれなかったり、開催されるイベントが少なかったりと、1人で走ることが多くなったいま、モチベーション維持は難しい課題。楽しくランニングを続けている人はどのようにして仲間とコミュニケーションを取っているのでしょうか。

――SNSがきっかけで繋がっているランニング仲間はいますか?

高木 最近は開催される大会が少ないですが、会場で完走後に休んでいると声をかけてくれて、その後SNSで繋がるなんてこともあります。声をかけられるのって、たいていフィニッシュ後なんです。つまり、同じくらいのタイムで完走していて、レベルも同じくらい。1年後にはその時のタイムよりずっと速く完走している投稿を見て「ヤバい、自分ももっと頑張らなきゃ!」と刺激を受けています(笑)。レース後に大会名でタグを検索すると同じ大会に出場していた人で繋がることができます。

――ママになって“ママラン友”はできましたか?

池田 SNS繋がりのママラン友もいますよ。例えば、インスタグラムで「#ママランナー」とタグを付けて投稿したり、検索したりします。ママランナーで相互フォローすると、そこからどんどんフォロワーが広がっていくんです。子どもがいるとなかなか一緒には走れないですが、子連れでランチして、走る時間の作り方や産後ランの悩みを情報交換しています。バーチャル大会にママ同士でチームを組んで参加するのも楽しいですよ!

――バーチャル大会なら集まれなくても同じ目標を目指して頑張れますね。

池田 昨年は、アシックスが主催した世界中のチームとバーチャル上で競い合うバーチャルレース ASICS World Ekidenにママラン友や同僚みんなで参加しました。アシックスはランニング大好きな人ばかりですが、なかには誘われてしょうがなく出る人もいます(笑)。

高木 お客さまのなかにも、同僚数名で「フルマラソン走ることになっちゃった!」とランニングシューズ買いに来られる方もいますね。

――リモートワークでなかなか会えない同僚とバーチャル大会で健康維持もアリですね!

小谷 ランニングアプリの「ASICS Runkeeper™」では、コーチや同僚でグループを作っています。1週間に走る距離や時間のノルマも設定できます。メンバーが走った記録がUPされると通知が来るんですよ。「あ、走ってる!自分も走ろう!」とモチベーション維持に繋がっています。結構みんなの練習をチェックしています。

高木 小谷コーチのランニング記録の通知は毎朝来ますからね!(笑)

池田 みんなの練習した距離やタイムがわかるので、一緒に走らなくても「一生懸命練習しているんだな、自分も頑張ろう」と思える現代の素晴らしいツールですよね。

――コメントやいいね!が励みや、やる気に繋がることも多いですね。

小谷 ランニング記録はSNSにアップもしています。陸上経験があると「昔の貯金で走っているんだろう」と思われがちですが、昔の貯金なんてとっくに使い果たしています(笑)。頑張って練習しているからこそ、記録を更新していると伝えたいんです。投稿を見て、知らない人からコメントが来ることもあります。実は、目標タイムも年齢も同じくらいのライバルのような存在の知人がいるんです。普段連絡を取っているわけではないですが、お互いSNSで繋がっているので、練習している様子を見て、負けていられないぞ!と頑張るモチベーションになっています。

ランニング仲間がいて良かった!と思う時はどんな時?

――イベントや大会、SNSで出会うランニング仲間。仲間がいてよかった!と思う出来事はありますか?

池田 私は、育休中に仲間の存在の大きさを感じました! 社会との接点がないなかで、SNSで繋がっている仲間が刺激になって気持ちも前向きになれました。それに辛いことがあっても、別の世界で繋がっているランニング仲間がいると、頑張りをお互い認め合えるのが良いですよね。

小谷 僕は、大会で自己ベストを出した時「1人だったら続けていなかった、まわりの仲間のおかげだな」と実感します。大人になって褒められることってあまりないですよね。タイム出した時に「すごいね!」と言ってもらえると仲間がいてよかったなと思います。

高木 1人ではできないことや、つい妥協してしまうことも仲間と一緒だとできる時ですね。ランニングは個人競技ですが、仲間と切磋琢磨するのはなんだか部活のような楽しみがあります。昔からの知り合いは、ランニングを通して繋がっている人が多いんです。社会人になってそれぞれ色んな仕事に就いて環境が変わっても、ランで繋がっています。

たくさん走っている仲間もいれば、お休み中の仲間もいる。大会に出る仲間もいれば、ゆっくりと街ランが好きな仲間もいる。チームスポーツではないからこそ、いつでも再開でき、レベルが違っても一緒に走れるランニング。そんな自由さが繋がりやすい理由なのかも。ランニング仲間と一緒に走る楽しみを見つけてみませんか?

 

Text:Emma Nakajima