トラック&フィールド、あるいはジムやランニングで着る際の「機能性」は保ちつつ、街で身に纏ってもクールに見える「ファッション性」も、同時に追求していく……。2017年秋冬シーズンから、そんなデザインコンセプトを打ち立てているアシックスのトレーニングアパレル。そのコンセプトを象徴するプロジェクトのひとつが、ファッションブランド「ANREALAGE(アンリアレイジ)」とのコラボレーションによって誕生した、「KALEIDOSCOPE COLLECTION(カレイドスコープ・コレクション)」だ。


スポーツアパレル4品番、シューズ1品番を手がけたアンリアレイジの代表取締役/デザイナーの森永邦彦氏に、カレイドスコープ・コレクションに込めた思いを訊いた。

カレイドスコープ・コレクション

「再帰性反射素材」とは?

——今回のコラボレーションには、どのような狙いを持って臨まれたのでしょうか?


カレイドスコープ・コレクションは、パフォーマンス性とビジュアルの驚きを両立させることに重きを置いたプロジェクトです。取り組みが始まったのは、ちょうど1年ほど前。具体的には、自身のコレクションにも使っているリフレクター(反射)素材を、もっと突き詰めてみたいというこちらの思いと、夜のランニングや街歩きに映えるアパレルを求めていたアシックスさんの思いが一致した、ということから始まりました。


——今回用いられたリフレクター素材は、どういった特性を持つ素材なのでしょう?


「再帰性反射素材」というものです。反射素材というのは、通常、表面が平らであれば「光の入射角に応じた角度で反射」しますし、表面がでこぼこしていれば「乱反射」します。それに対して再帰性反射素材は、「入射してきた方向に反射」するという特性を持っています。


——反射素材というと、キラキラ光るとはいえ、通常は単色のイメージです。しかしカレイドスコープ・コレクションの場合は、そのネーミング通り、万華鏡のように多彩な色が立ち上がることに驚かされました。


そうですね。反射という言葉が示している通り、従来の反射素材は、白い光を当てたら白い光を跳ね返す、というのが当たり前でした。今回は、白い光を当てて、青い光や赤い光を跳ね返すという反射現象の特性を崩すことで、異なる表情をつくっています。特許技術なので詳しくは言えないのですが、再帰性反射素材というのは塗料に極小のビーズが含まれており、そのビーズに“とある工夫”をすることで、多彩な色を出しているんです。


元々アンリアレイジには、「日常と非日常」というテーマがあります。それを象徴するひとつが「光と闇」だと思っています。洋服を通じてその2つの境界線を揺るがすことが、ぼくたちが目指していることなんです。


そもそも洋服にとって光というのは、忌み嫌うべき存在です。日光を浴びると、染料の分子が変形したり、素材自体の色が変わってしまいますからね。今回のカレイドスコープ・コレクションには、そうした洋服と光の関係性も揺るがしていけたら……という思いも含まれています。

「テクノロジー」を纏う意義。

——森永さんは、アシックスというブランドに対し、元々どういった印象を持っていたのでしょうか?


ぼくは学生時代にバスケットボールをやっていて、ずっとアシックスのバッシュを履いていました。その頃から、「堅実なものづくりによってずっとスポーツを支えて来た、誇るべき存在」というイメージを持っています。あと、我が道を歩んでいるという印象もあります。


実際、今回ご一緒したプロジェクトでも、ものづくりに対する時間のかけ方すごく丁寧なので、非常に勉強になりました。揺るがない姿勢のようなものを、アシックス内部の方々から強く感じましたね。


アンリアレイジとアシックスに共通しているのは、「テクノロジーを纏う」という部分だと思います。そのテクノロジーを、アシックスの場合はパフォーマンスを向上させるために用い、僕たちは、視覚的な驚きをもたらすために使っています。


今回僕たちが目指したのは、その「2つのテクノロジーのレイヤー」が重なるものを生み出すことでしたが、アパレルとシューズの出来映えには、個人的にとても満足しています。純粋にファッションとして楽しめると思いますので、ランニングに限らず、デイリーでも使用していただきたいと思います。


とりわけ、写真を撮ってシェアすることが当たり前になっている若い世代には、ぜひスマートフォンでフラッシュ撮影をしていただきたいと思います。再帰性反射素材は「入射してきた方向に反射」しますから、フラッシュとレンズが同じ位置にあるスマートフォンは、カレイドスコープ・コレクションの多彩な表情を楽しむのに最適なんです。


——最近は「アスレジャー」という言葉もよく耳にしますが、スポーツアパレルという側面から見て、今後、東京の街がどのように変わっていくとおもしろいと思われますか?


2020年には、いろいろな国籍の方々が東京を訪れることになりますので、多様な価値観やセンスを共感できる感性が、より必要になってくると思います。


そのなかでもスポーツは、ますますライフスタイルのベースになり始めている気がします。それはつまり、必然的にファッションと結びついていくということでもありますので、僕たちも、スポーツとファッションのあり方を、しっかり見据えていかなければならないと考えています。


——実際いま、ボーダーやジェンダーをはじめ境界線がどんどん崩れていますし、従来の領域を超えたコラボレーションも、より盛んになっていくと思います。その流れで言うと、今後テクノロジーによって、ファッションの可能性はどこまで広がっていくとお考えですか?


テクノロジーの種類は膨大にありますが、ファッションとの相性を考えると、着心地に落としていく作業が不可欠なので、トライしたいことはいくつもあるのですが、まだまだ時間はかかると思います。今回は、再帰性反射というテクノロジーを使って肉眼を裏切るアイテムを生み出しましたが、これからは、視覚以外の知覚を刺激するようなファッションが、どんどん増えるのではないかと思います。あと、サイズ調整ができる服、というのも可能性としてはあり得ると思います。


Anrealage-main


TEXT: Tomonari Cotani