普段からスポーツと接する人でも、体験したことのない競技も多いハズ。あまり知られていないけれど、気軽に始められて楽しくて健康にもいい、実はそんなスポーツがまだまだあります。本連載ではそんな魅力の詰まったスポーツを紹介していきます。今回は、自然の美しさを感じながらランニングを楽しめると、ランナーのあいだでいま話題のトレイルラン。世界で活躍する荒木宏太選手に、トレイルランの魅力についてプロの視点から語っていただきました。


―いま、トレイルランに注目が集まってきていますが、荒木選手はどうご覧になっていますか?


日本でも広がってきているのはうれしいですね。ですが、まだマラソンの延長というイメージを持っている人も多いのも事実です。海外でのトップ選手のメディアの露出の数や扱いは日本とかなりの差があり、とくに欧米では人気があるスポーツのひとつとして認知されています。


日本では欧米の文化としてトレイルランが入ってきましたが、実は日本にはもともと「山岳レース」というトレイルランのような文化があるんです。そのなかでもっとも過酷と言われるのが、日本山岳耐久レース、通称ハセツネです。走行距離は71km、累積標高差は4582m。この数字もなかなかですが、何が一番キツいかというと水がほとんど飲めないということ。給水所は1ヵ所のみで、あとは自分で背負って走らなければならないんです。もちろん他の人の協力があってもだめ。こんな過酷な大会は海外でもないですね(笑)。歴代の優勝者を見ていくと、いまプロのトレイルランナーとして活躍している人ばかりで、いまでは世界に進出するための登竜門という存在になっています。

トレイルラン

―トレイルランとマラソンとの違いはなんでしょうか?


形式的な話でいうと、トレイルランのレースで規定されているのはコースの7割が未舗装であるということですが、どちらかというと「思い」に違いがあるといってもいいかもしれません。マラソンはいかに早くゴールできるかが重要ですが、トレイルランはそもそも完走することに意義があるスポーツ。トレイルランも順位はつくものの、レースによっては完走率数%というのもある。そう考えるとエクストリームなスポーツであり、スピードのみを重視するのではなく、むしろサバイバル(完走)できるだけでも素晴らしいことだったりするんです。

荒木宏太選手

―そうした厳しい環境のなかでもトレイルランにハマってしまう魅力ってなんでしょうか?


「刺激」でしょうか。マラソンにはマラソンの素晴らしさがありますが、スピードの限界というものが見えてきます。加えて、速さにこだわるがゆえに体力的に辛いっていう人も多かったりします。一方、トレイルランは場所によってはゆっくり走ったりすることもあって、体力の消耗スピードはそこまで速くない。ですが、先程お話したように、完走率の低いものだとそれだけ過酷な環境にさらされますので、そのなかで完走まで耐えられる精神力を保てるかどうかが重要です。マラソンに必要なものが体力だとするならば、トレイルランに必要なのは精神的なタフさですね。そうした、いままでとは違う環境で走ることで新しい刺激を得られるという理由から、トレイルランにも挑戦するマラソンランナーが多いのかもしれません。


―ありがとうございました。


マラソンとはまた違った楽しみ方ができるトレイルラン。次回は「どうやって始めたらいいの?」「道具は何をそろえたらいいの?」といったトレイルランビギナーのためのレクチャーをお届けします。



Text Keisuke Tajiri
Photo Masayo Momijiya