普段からスポーツと接する人でも、体験したことのない競技も多いハズ。あまり知られていないけれど、気軽に始められて楽しくて健康にもいい、実はそんなスポーツがまだまだあります。本連載ではそんな魅力の詰まったスポーツを紹介していきます。

圧倒的な迫力に心惹かれるダブルダッチ

ダブルダッチというスポーツをご存知でしょうか。2本のロープを巧みに操り、そのなかでアクロバティックなパフォーマンスを繰り広げるスポーツで、いま若者を中心に人気を集めつつあります。ダブルダッチは基本的に「ターナー」と呼ばれる2人のロープを回す人と、「ジャンパー」と呼ばれるロープを跳ぶ人で構成されています。スタイルは大きくわけて、細かいルールのもとにスピードやテクニックを競い合う競技と、音楽に合わせて自由にパフォーマンスするフリースタイルの2種類。

 

その発祥は、名前のとおりオランダ人(Dutch)が行っていたもので、その後ニューヨークで広まりました。日本では1996年に日本ダブルダッチ協会が発足し、次第にプレーヤーが増加。いまでは、日本勢は数々の世界大会で上位を独占するほどの強さを誇り、世界のダブルダッチ界を牽引しているとも言われています。その強国とされる日本のなかでもトップを走るチームが、「REGSTYLE(レグスタイル)」です。

 

今回はそんなダブルダッチの魅力を知るべく、REGSTYLEの練習シーンにお邪魔させてもらい、メンバーのKaiさんに話をうかがいました。世界を代表するチームともあって、ストイックに突き詰めた様子かと思いきや、ノリのいいヒップホップの曲をBGMに和やかな雰囲気のなか練習は行われていました。

 

「ダブルダッチは"遊び"から始まってるんです。もちろんいいパフォーマンスをするために真剣に練習もしていますが、まずはウオーミングアップがてら、自由に遊びの気持ちを忘れずに跳ぶようにしています」とKaiさんは話します。

スポーツのススメ vol.2 ダブルダッチ編

音楽とロープの動きに合わせて軽々と跳んでいるようにも見えますが、なんとジャンプする高さはわずか数センチ。地面と靴底のギリギリの隙間をロープが通り抜けていきます。そこから徐々に動きもダイナミックになり、最後はロープの外から助走をつけて側宙を決めてフィニッシュ……!(トップの画像)。映像でダブルダッチを見たことはあったものの、間近で見ると圧巻の一言で、その迫力に圧倒されます。

スポーツのススメ vol.2 ダブルダッチ編

世界の舞台よりも、日本を選んだ理由

ダイナミックな技を魅せてくれたKaiさんですが、実は、シルク・ドゥ・ソレイユでもパフォーマンス経験のある、世界的に活躍するプレーヤーでもあります。もともと日本では「カプリオール」と呼ばれるチームが圧倒的な実力を誇り、シルク・ドゥ・ソレイユを中心に活動していました。そこにKaiさんもジョインし、一時期は世界中を回っていたそうです。

 

そのままシルク・ドゥ・ソレイユでパフォーマンスを続けることもできたKaiさんですが、あえて帰国を決意。というのも、日本のトップを独走していたカプリオールが海外に拠点を移したことで、日本のダブルダッチ界に憧れとなる存在がいなくなり、ダブルダッチの文化が廃れてしまうのでは、と危機感を覚えたのだそう。

スポーツのススメ vol.2 ダブルダッチ編

「これからさらに日本のダブルダッチ界を盛り上げるためにも、かつてのカプリオールのようなリーダー的な存在が必要だったんです。そこでリーダーのKO-YAが、日本のトッププレーヤーたちに声をかけてできたのがREGSYTLEです。シルク・ドゥ・ソレイユの世界も楽しいですが、日本からダブルダッチの文化がなくなってしまうほうが寂しいですからね」

 

ほどなくしてREGSYTLEは世界大会で優勝を飾り、いまではメディアやイベント出演で引っ張りだこの人気チームに。REGSTYLEにあこがれる学生も多く、大学サークルのコーチとして、プレーヤー育成にも積極的に取り組んでいるようです。

ダブルダッチは自分のやりたいことを表現する場

「ダブルダッチに興味は出てきたけれど、アクロバティックな動きはちょっと……」と考える人も少なくないはず。ですが、実はダブルダッチはパフォーマンスのスタイルに決まりはなく、自由になんでもできることが魅力だとKaiさんは話します。

 

「たとえばロープのなかでバスケをする人もいれば、ジャグリングをする人もいるんです。ダブルダッチで決められているルールは2本のロープを使うことだけ。その空間のなかであれば自分のやりたいことを自由に表現していいんですよ。自分は何を魅せたいのか、どんなスキルを持っているか、そこが大事なポイントですね」

スポーツのススメ vol.2 ダブルダッチ編

取材陣も体験させてもらいましたが、交差する2本のロープにさえ入ることができればあとはリズムよく跳ぶだけでカンタン。といっても、ジャンプのタイミングに合わせてターナーが上手く回してくれているおかげだったりもします(笑)。ビギナーは、その場でただ跳ぶことくらいしかできませんが、それでも十分にダブルダッチを楽しむことができました。

 

ダブルダッチは2本のロープと、ターナーとジャンパーの3人が揃うだけで、場所も選ばずにすぐに始めることができます。ですが、メンバーが足りないという場合や、誰かに技を教えて欲しいという人は、月に一度、駒沢公園で開かれる交流イベント「Let's Play Double Dutch」、通称「レッツ」と呼ばれる交流会を訪れてみるといいかもしれません。学生を中心に子どもから社会人まで多くの人で賑わい、気軽に教えてくれるそうです。

スポーツのススメ vol.2 ダブルダッチ編

取材終えて感じたのは、とにかく自由なスタイルで楽しそうにプレーしているということ。細かいルールに縛られず、遊びの延長のような感覚で自分の思いのままのスタイルで自由にパフォーマンスできることが、いまの若者から支持をあつめる理由かもかもしれません。

 

Kai(CAPLIORE/REGSTYLE所属)

国内大会・国際大会で優勝経験を持つ。2015年に舞浜アンフィシアターで開催された、ダンス+エンターテインメントのダンスコンテスト「超 DANCE@HERO」のGRAND FINALにて優勝、ダブルダッチの祭典といわれる「DOUBLE DUTCH CONTEST WORLD」にて2017年・2018年と世界大会優勝2連覇の快挙を成し遂げる。プロモーションイベント・企業パーティー・教育機関などさまざまな場所でパフォーマンス・ワークショップを行うほか、 タレントへのダブルダッチ指導、メディア出演など活動の幅を広げている今注目のプロダブルダッチチーム。

http://ov-t.com/regstyle.html

 

text: Keisuke Tajiri        photo: Yusuke Hayashi