普段からスポーツと接する人でも、体験したことのない競技も多いハズ。あまり知られていないけれど、気軽に始められて楽しくて健康にもいい、実はそんなスポーツがまだまだあります。本連載ではそんな魅力の詰まったスポーツを紹介していきます。前編に引き続き、プロのトレイルランナーとして活躍する荒木宏太選手にトレイルランを始めるための必要な道具やトレーニング方法などのアドバイスをいただきました。

シューズはグリップ力とクッション性で選ぼう

―トレイルランを始めるにあたり、どんな道具を用意したらいいのでしょうか?

 

街なかでのランニングとは違い、山道ではもしものときに自動販売機やコンビニなどに頼ることができないので、十分な装備が必要です。ですが、荷物が多過ぎると今度は快適な走りにはならないので、非常食、飲料、スマートフォン、バックパック、トレイルラン専用のシューズは最低限携行しておいたほうがよいでしょう。

トレイルラン

このなかでも重要なのがシューズです。ランニングシューズでもいい、と思われるかもしれませんが、いくつか違いがあります。ひとつはグリップ力。岩やぬかるみなど山道はさまざまな地形になっているので、横滑りしないものを選ぶとよいです。もうひとつの違いはクッション性。ランニングシューズは上級者になるほどソールが薄くなっていきますが、トレイルランのシューズには優れたクッション性が備わっています。というのも、岩場はアスファルトよりも硬いときがあって、下りだと着地の衝撃にかかる圧力が平地の3倍以上になるんです。トレイルランの重要なところは、下りの負担を軽減して足の筋肉を壊さないこと。ちょっとしたジャンプでも身体へ負荷が大きくかかるのでクッション性は大切なポイントですね。

ALPINE XT
ALPINE XT/ソールに厚みをもたせたエントリートレイルランナー向けモデル
GEL-FujiTrabuco 6
GEL-FujiTrabuco 6/安定性とクッション性に優れた、エントリーランナー向けのハイスペックトレイルランニングシューズ

怪我のリスクがあるので、まずは経験者に同行

―準備が整い山に入るにあたって、どのようなことに注意する必要があるのでしょうか?

 

トレイルランはランニングと近い関係なので手軽に始められるものではありますが、山の中ということを忘れてはいけません。天候も変わりやすいですし、登山よりも軽装で走るので怪我もしやすい状況です。場合によっては滑落や遭難など予期せぬハプニングに見舞われる可能性もあるので、手軽さとは裏腹に厳しい環境にいるということを意識した上で入山するようにしましょう。

 

―ひとりで始めてもよいものでしょうか?

 

初めてトレイルランをする人は怪我のリスクなどもあるので、まずは経験者に同行するのがベストです。慣れてきたら友人など複数人で行き、レースに出るようになったらひとりでも大丈夫だと思います。レースへの出場に本格的に取り組んでみようという方は、トレーニングをしてみてはいかがでしょうか。たとえば、ロードとオフロードの走り込みもひとつですが、ジムなどに置いてあるトレッドミルも効果的です。傾斜をつけてひたすら高度累積を稼ぐことで、登るための筋肉がついて楽に走れるようになってきます。僕の練習プランは週に一度10kmほど山で走り、残りの日はロードで15km~20km走り込んでいきます。下山の時は足場の悪いなかでどこに足を踏み出すのが最適か直感で見極めていかないといけないので、ラダーを使ったトレーニングで神経系を鍛えています。

荒木宏太選手

標高差が少なく、走行距離も短いレースがおすすめ

―最初はどんなレースに参加するとよいでしょうか?

 

初心者から上級者向けまで全国にはさまざまなレースがあるので、まずは累計標高差が少なく、走行距離も短いところから参加するのがオススメです。易しいところから参加して十分に実力が出せることがわかったら少しずつ難易度を上げていくとよいでしょう。ほかにもトレイルランのレース情報を提供するサイトに「初心者向け」という表示があったりするので、そういったものを参考にしてみてはいかがでしょうか。

 

―ありがとうございました。

 

Text Keisuke Tajiri
Photo Masayo Momijiya