「寒いから長袖で走り始めたけれど、走っているうちに暑くなってしまう」
「半袖で走り出すには、寒すぎる。何を着たらいいかわからない」
ランニングのウエア選びは、意外と難しいもの。どんな季節でも快適に走るためには、どんなウエアを選ぶのが良いのでしょうか? ランニングウエアの選び方と冬でも快適にランニングを楽しむコツをコーチに聞いてみました。

<目次>

・ 快適に走るための工夫がたくさん。ランニングウエアの基礎知識。

・ 冬にランニングをするときの注意点は?

・ 冬のランニングは、どんなウエアを選べばよい?

・ お悩み別、おすすめウエアやアイテムを紹介

■教えてくれた人

小谷浩さん(アシックスランニングクラブコーチ)

アシックスラン東京丸の内常駐のランニングコーチ。国内外のマラソンや国際マラソンなど多くのレースに出場した経験や、東京マラソンのペースセッターなど、豊富な経験を活かし、ビギナーから上級者までさまざまなレベルのランナーをサポートしている。シューズやウエアに関する知識も豊富なので、店頭で見かけた際はぜひ相談を。
アシックスラン東京丸の内については、こちら

快適に走るための工夫がたくさん。ランニングウエアの基礎知識。

ランニングウエアの中でも、アウター・インナー・タイツには、機能面での多くの工夫が施されている。

――そもそも、ランニング専用のウエアにはどんな特徴があるのでしょうか?

大きく次のような特徴があります。

(1)吸汗速乾性

ランニングは汗をかく運動ですので、ウエアは吸汗速乾性に優れたつくりになっています。たとえば、カジュアルウエアなどの素材として一般的なコットンは、汗を吸って重くなり、乾きにくい特徴があります。また、肌に吸い付いて着心地が悪くなってしまうだけでなく、運動後に汗冷えを起こしてしまう原因にもなります。

いっぽうで、ランニングウエアの素材として使われることが多いポリエステルなどの化学繊維の素材は、吸汗速乾性に優れていて、軽量なものが多くなっています。

吸汗速乾性
ランニング用ウエアに使われている素材は、メッシュになっていたり(写真左)、裏地に小さな凹凸があったり(写真右)、汗をかいてもウエアが肌に張り付きにくい工夫がされているのも特徴。

(2)走りやすさを追究したデザイン

ランニングウエアは走る身体の動きに合わせてデザインされています。たとえば、腕振りを妨げないように肩甲骨などの肩まわりが動かしやすく可動性のあるデザインになっているものもあります。また、長時間走っていると、ウエアと肌が擦れて痛くなることもあるので、縫い目が極力少ないデザインになっているのも特徴です。

女性用のランニング専用ブラも通常の下着に比べ、動きやすさに配慮しながらもサポート力を強化したデザインになっています。

走りやすさを追究したデザイン
タイツに関しても模様のように見える部分が、実は膝やふくらはぎのサポート機能を担っている。タイツをはくことで、脚の揺れをサポートする。

(3)軽量&ストレッチ

ランニングウエアは、身体に負担がかかりにくいよう軽量に作られているものがほとんどです。また、伸縮性のない生地は、膝やひじの部分がつっぱり、着心地が悪く感じることもありますので、身体の動きに合わせて伸び縮みするストレッチ素材が使われているのが一般的です。

冬にランニングをするときの注意点は?

――ランニングにとって冬はどのような季節でしょうか?

冬はまさにランニングシーズンです。駅伝をはじめ多くの大会が冬に行われるように、中上級者にしてみれば走りやすい季節なのです。夏と比べると熱中症リスクも抑えられますし、汗をかく量も減ります。さらに湿度も低いので呼吸もしやすいですね。初心者の方々は「寒くて外に出るのが嫌」と思うかもしれませんが、いざ外に出て走り始めさえすれば身体が温まってきて快適に走れることに気がつくはずです。

――冬に走るメリットはどんなところにありますか?

気温や湿度が低いぶん、夏よりも快適に走ることができるので、走る距離を伸ばしたりスピードを速めたりと、質の高い練習ができると思います。また、私はもっとも季節感を感じられるスポーツがランニングではないかと思っています。いつもと同じ時間、場所を走っていても、夏は夕暮れ時を、冬は夜景を楽しみながら走ることができるんです。そうした季節感の違いを感じながら走りを楽しむのもいいと思います。

――なるほど。個人的に、冬は寒くて外を走るのが億劫なのですが、景色を楽しむことをモチベーションに外を走ってみたいと思います。冬に外を走る際、気をつけるべき点はありますか?

寒い季節ですので、身体が冷えている状態からランニングを始める人が多いと思います。ですが、これは怪我や故障のリスクを高めてしまいます。

記録を目指して頑張って練習するという方は、きちんとウォーミングアップしておくことをおすすめしますし、ランニング後のストレッチなどのケアも念入りにした方がいいと思います。私自身も冬はいつもより長めのウォーミングアップやストレッチをするように心がけています。

そして、脱水症状にも注意してください。冬はあまり汗をかかないですし、喉もあまり乾かないので、脱水症状に気づきにくいんです。「水分補給は年中無休」というイメージで、こまめに水分を摂りましょう。

冬のランニングは、どんなウエアを選べばよい?

――冬のランニングには、どんなウエアがおすすめですか?

まず冬用のウエアを用意することですね。同じランニングウエアでも季節ごとに素材や生地の厚さが違っています。たとえば、裏起毛になっていたり、風を通しにくくなっていたりするものが多いですね。

――冬用のウエアもたくさんあると思いますが、選び方のコツはありますか?

走るシーンを思い浮かべて選ぶようにしてください、家から出てすぐに走り始めて、そのまま家に走って帰るのか、皇居のまわりのようにランニングステーションがあるエリアを走るのか。それだけでウエアの選び方は変わってきます。

私の場合、ランニングコースを走り終えてから帰ってくるまでにクールダウンのための時間と距離を確保しているので、コンパクトにまとめられるジャケットをポケットに入れて調節しています。

これらを考慮した上で、何パターンかウエアの組み合わせを考えておくのがおすすめです。暖かい時のウエア、寒い時のウエア、雨の日のウエアの3パターンがあれば、さまざまな天候でも対応できるはずです。

ランニング用のジャケットの中には、ウエスト部分にストレッチ性があり、暑くなって脱いだジャケットを収納することができるものも。

――ジムのランニングマシーンで走る場合は、夏用と冬用どちらが良いのでしょうか?

どちらでも構いませんが、ジムの中は室温が暖かく風も吹いていないので、基本的に夏用でいいと思いますよ。

お悩み別、おすすめウエアやアイテムを紹介

【お悩み1】家を出たときは寒いけど、走っているうちに暑くなってしまいます。

走る前はちょっと寒いかもしれませんが、少し薄着にした方がいいですね。

走ると身体が温まるので、少なくとも下半身はそんなに着込まなくていいと思います。上記のようなウエスト部分にジャケットを収納できるパッカブルジャケットなど、ぜひこういった小さくたたんで持ち運びしやすいアイテムを活用してみてください。極端に寒がりならタイツも冬用の裏起毛のものがいいですが、そうでなければ年間通して同じタイツで構いません。あとは、室内である程度ストレッチなどをして、外に出る前に身体を温めておくのもいいと思います。

【お悩み2】走っていても、足先や手先、耳、首はずっと冷たいんです。

ランニングシューズは通気性が良いので、足先に関しては冷えるのも仕方ないですね。足先の冷えがどうしても気になる場合は、GORE-TEX(ゴアテックス)素材のシューズもありますよ。GORE-TEXは、防水透湿性を持つ素材として有名ですが、防風性もあるので風を通しにくく足を冷やさず走ることができると思います。

手首を温めるのなら長めのグローブがおすすめです。足首もリストバンドの足首版のようなアンクルウオーマーというアイテムがあるほか、くるぶしまでの長めのロングソックスやふくらはぎをサポートするゲイターをはくのもいいですね。

耳はニット帽かイヤーウオーマーをお好みに合わせて選ぶと良いでしょう。首にはランニング用のネックウオーマーが用意されていますが、耳まで覆うことができる大きめのものもあるので、ぜひ比べてみてください。
●手足の寒さ対策アイテムはこちら

【お悩み3】走っている途中、休憩でコンビニやカフェに入った時、汗冷えをしてしまいます。

コンパクトなジャケットを一枚持って行くのがいいですね。たまに暖かく感じる薄い肌着を着てランニングする方がいらっしゃいますが、ランニング向きの作りにはなっておらず汗で濡れて冷えの原因になってしまいます。冬でも吸汗速乾性に優れたランニング用のシャツをおすすめします。
●汗冷え対策に便利なアイテムはこちら

【お悩み4】車や自転車に気付かれず、危険な目にあいそうになりました……。

冬は日が暮れるのが早いので、視認性の良い色のウエアを選ぶか、黒いウエアでも反射材がついているものを選ぶようにしましょう。暗い中でも視認性に優れたリフレクター付きのアイテムを揃えているLITE-SHOW コレクションがあるので、ぜひアイテムチェックしてみてください。

 

ランニング用のウエアには、たくさんの特徴や機能があります。走るシーンや季節に合わせて、ご自身にとって最適なウエア選びをしましょう。

Text:Kenta Terunuma
Photo:Tetsuya Fujimaki