今や街で見かけるランナーのコーディネートに欠かせないアイテムになっているランニングタイツ。なぜみんなランニングの時にタイツを履いているのでしょう?
「おしゃれに見える」「脚を出すのが恥ずかしい」など、ランニング時にタイツを履く理由は人ぞれぞれではありますが、実はタイツにはさまざまな種類や役割があります。おしゃれアイテムとしてだけでなく、その機能と特徴に注目してみましょう。
<目次>
- なぜランニングにタイツが必要なのか
- 初心者はどんなものを選ぶべき?スポーツ用タイツの選び方
- ランニング用タイツは、素材やデザインにも注目
- ランニング用のタイツを試着する際のチェックポイント
■教えてくれた人
池田美穂さん
アシックスランニングクラブコーチ。東京マラソン・ニューヨークシティマラソンといった市民マラソンから、大阪国際女子マラソンなど国際レースに出場。アシックス直営店や全国各地で、市民ランナーへのランニング指導を行っている。

なぜランニングにタイツが必要なのか
ランニングパンツにタイツを合わせるスタイルは、いまやランナーの定番。最近では、黒系のシンプルなものだけでなく、ロゴや柄入りのものまでコーディネートにも活躍するさまざまなデザインのタイツが増えてきました。そもそもランニング用のタイツにはどんな役割があるのか、池田コーチに聞いてみました。
――初心者ランナーなら、ランニングタイツは履いた方が良いのでしょうか。
走ることに慣れておらず、スポーツの経験があまりない人にこそ、タイツはおすすめです。生地が肌に密着することで、脚の脂肪や筋肉の揺れを抑えます。また、肌に密着したタイトな作りなので脚の動きを邪魔しにくく、長いズボンよりも動きやすいと思います。
――なるほど。確かにランニング用ではない手持ちのジャージで走っている人には間違いなくおすすめですね。ちなみに、「筋肉の揺れ」とはどういう状況でしょうか。
ほとんど運動経験のない人の場合は、筋肉量も少ないことが多いので、ランニング中に脚の脂肪が揺れやすいのです。特に、走ると太ももが揺れますので、疲れやすいだけでなく、膝などに負担がかかる可能性もあります。
――では、ある程度密着していればどんなタイツでも良いのでしょうか。
ランニングだけでなく、スポーツを長く続けるのであれば、スポーツメーカーのタイツが良いと思います。各メーカー、ヒトのさまざまな体の動きを研究し、動きに合わせてどこの筋肉がどのように動くのかを把握した上でデザインしているわけですから、ランニングや各スポーツに特化したタイツと言えるでしょう。素材も吸汗速乾の生地で作られており、縫製や縫い目などが長時間走っても気にならない配置になっていることが多いと思います。
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初心者はどんなものを選ぶべき?スポーツ用タイツの選び方

スポーツ用タイツは、サポート性の高い機能性タイプと、トレーニング全般に使えるタイプと大きく2つに分けられます。ランニング初心者はどちらを選ぶのが良いのか、タイツの特徴とあわせて教えてもらいました。
――スポーツ用のタイツのなかでも、機能性の高いものからファッション重視のものまでさまざまあるように思います。初心者ランナーにおすすめなのは、どのようなタイプでしょうか。
初心者の方は「ランニングフォームが安定していない」「筋力が少ない」などの特徴がありますので、それらをサポートしてくれるタイプの機能性タイツがおすすめです。選ぶ時のポイントは、「動きやすさ」と「サポート機能」です。
サポートのある「機能性タイプ」
ビギナー~中級、フルマラソン4時間前後のランナーにおすすめ。骨盤や体幹、腿の揺れなどをサポートする機能が備わっている。
(1)コアバランス機能
初心者は長時間走っていると、骨盤が後傾しがちです。それにより前腿に負担がかかってしまいます。骨盤が適度に前傾し腰の位置が高くキープできれば、前後均等なバランスで走ることができます。そのため、骨盤を正しい位置に戻すようなサポート機能がついています。
(2)レッグバランス機能
腿の揺れ、膝、ハムストリングス・ふくらはぎのサポート。特に、腿の大腿四頭筋という大きな筋肉は、走ることで揺れやすいと言われています。この揺れが膝の負担に影響するため、タイツで押さえることで身体への負担を軽減してくれます。
その他トレーニング全般に使えるタイプ
動きやすさ重視でストレッチ性が高いものから生地がソフトなものなど、サポート力は少ないものが多い。ランニングだけでなくジムでのトレーニングやヨガなどにも適しています。ある程度の筋力や走力のある人、短い距離のジョギングであれば、このタイプでもOK。
スポーツ用タイツは、素材やデザインにも注目

ランニングをはじめとした、スポーツに適したタイツは、素材やデザインにも特徴があります。骨盤の位置を安定させやすいように、ウエストのゴムが太いものになっていたり、暑さ対策のためにメッシュ素材になっていたりと、その工夫はさまざま。どのような使い分けをするのが良いのか、聞いてみました。
――夏にタイツを履くのは暑い気がしますが、季節によって使い分けも必要でしょうか。
暑さ対策は大切です。肌を生地で覆ってしまうと体温調節がしにくく、体に熱がこもりやすいため、そんな時には丈の短いものを選んでみるのも良いでしょう。サイドがメッシュで素材の切り替えがあるデザインのものもおすすめです。逆に、寒い時には筋肉を冷やさないように保温性のあるものを選ぶと良いと思います。短パンを重ねずにタイツ1枚での着こなしができるタイプのものは、生地が厚く下着が透けないような工夫がされていて、鍵やコイン、スマートフォンを入れられるポケットが付いているタイプもありますよ。厚くても、素材自体は吸汗速乾性に優れたものを選ぶと良いと思います。まずは、気候やシーンに合せて素材や形を選び、その次に好きなプリントやデザインを選んでみてください。
ランニング用のタイツを試着する際のチェックポイント

いくら優れたタイツでも、正しく履かなければその機能を十分に感じることができません。サイズ選びも大切です。試着の際にはどのようなポイントを確認すれば良いのでしょうか。
――試着ではどのようなポイントを確認すれば良いのでしょうか。
ランニングタイツは購入前に試着することをおすすめします。サポート機能のあるタイツは、まず初めて履いた時にそのタイトさに驚くと思います。サポート力があるものは締め付けも強く、履く時に窮屈に感じることがあるかもしれません。「膝の位置」「骨盤の支え」「ヒップのおさまり」「全体の動きやすさ」の4つのポイントをもとにサイズを選び、自分に合ったものを探してみてください。モデルによっても異なるため、迷ったらショップスタッフに相談しましょう。

1. 膝の位置を合わせる
タイツを腰まで履いたら、まず膝の位置をあわせましょう。サポートのラインがわかるものはサポート部分(上の写真では、クロスしている部分)が膝のお皿の下にくるように生地を動かしましょう。同時に、生地のねじれなどもチェックしましょう。
2. 骨盤が支えられているかを確認する
骨盤まわりにサポートがあるタイプのタイツは、腰の上まで履き、しっかりと支えられるように着用して、サポート具合をチェックしましょう。
3. ヒップのおさまりを確認する
前面の生地はへそ下になることが多いですが、モデルによっても異なります。ヒップは生地の形に合せて収まっているか確認しやすいポイントです。フィッティングルームの鏡でチェックしてみましょう。
4. 全体の動きやすさを確認する
サポートタイツはタイトなものが多いですが、走る上で動きやすさは大切です。1~3の手順で正しく履けたら、屈伸や開脚をして、足の動きやすさを確認しましょう。
――自分に合っていなければ、サポートタイツの意味がないということを痛感しました。慎重なタイツ選びが大切ですね。
タイツにもサイズ展開はあるものの、足の長さや太さ、形は人それぞれです。ASICSでは、3D計測マシンで体型を計測し、カスタマイズオーダーすることのできる「CUSTOM FIT(カスタムフィット)」というサービスもあります。走り始めの頃でも良いですが、体型が変化しやすい時期です。ある程度継続できるようになったら自分だけのタイツを作れば、より快適な走りになると思います。
CUSTOM FIT(カスタムフィット)についてはこちら
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TEXT:Emma Nakajima
PHOTO:Madoka Akiyama