スポーツと言われて思い浮かべるものは、部活やスポ根アニメなど、「学生時代の青春」を映し出すものが多いかもしれない。しかし、仕事に、遊び、恋愛と、毎日を生き生きと過ごす人たちの日常を覗いてみると、そこには、大人の日常に寄り添うスポーツの姿があった。“スポーツは、大人になった今だからこそ楽しい!”これを検証すべく、スポーツ好きが集まると噂の、ASICS社員のスポーツライフに迫っていく。

先端技術を結集してつくる最高の一足を

アシックスに「スポーツ工学研究所」という施設があるのをご存知だろうか。ここはヒト中心のものづくり行う基幹となる場所であり、スポーツにまつわるあらゆるデータと最先端技術の粋が集まった研究所だ。そこで勤務する石川達也はシューズに求められる機能を特定し、カタチにしていくフットウエア機能研究部に所属し,テニス,ラグビー,野球,サッカーなどの球技および陸上短距離種目のシューズ研究開発を担当している。

「どうすれば素早く動けるか」「身体に負担なく動けるか」など、種目ごとに人の動作を計測・分析し、素材や形状を導き出していく、シューズ開発におけるもっとも重要なファクターのひとつだ。

昨今のめざましい技術の進化によって、シューズ機能も進化の一途をたどり「究極の一足」の完成をめざす石川。だがアシックスが追い求めるものは機能だけではない。

「機能面は大切な要素ですが、アシックスが掲げるのは機能とデザインの両立です。デザイナーチームも開発チームもそれぞれの想いがありますが、お互いの意思を尊重しながら、使って頂くユーザーにとってもっともバランスのいい商品になるように試行錯誤しています」

そうしてつくられたシューズは、主にフラッグシップモデルとして店頭に並び、またトップアスリートの特注モデルとして世に送り出されている。

石川達也

そんな石川が普段から取り組んでいるスポーツはテニス。個人スポーツと団体スポーツの両面にテニスならではのおもしろさがあるという。

「個人スポーツの醍醐味としては、ゲーム性が高いことですね。自分の技術や体力などの能力を把握して、対戦相手と比べてどう戦えば勝つことができるのか冷静に判断して実行する。その判断が正しければ格上の選手に勝てることもありますし、逆に判断が悪ければ格下の選手に負ける場合もあります。そのためにも熱さと冷静さのバランスをしっかり取ることが不可欠で、そこがうまく行ったときの快感が魅力です。また、団体戦では仲間と戦う責任感や連携というところに団体スポーツのおもしろさがありますね」

シューズ開発を通じて世界の舞台に

社会人になったいまでもテニスを続ける石川だが、ふだんの生活のなかにスポーツがあることで仕事の役に立つことも多いという。

「仕事だけしていると、つい本来の目的を忘れて目の前の仕事をこなすことに集中してしまうことがあります。そもそも純粋にスポーツをすることでアイデアが整理されるということもありますが、『ユーザーが理想とするシューズは何なのか』『最適なアプローチは何なのか』といったこともプレーヤーの視点をもって考えることができますね」

石川達也

研究者としてスポーツ用品の開発に携わる石川だが、幼少のころはオリンピック選手を夢見るスポーツ少年だった。いまではその思いが技術となって世界のトップを突き進む。

「スポーツは本気で打ち込んで負けてしまうと悔しいですし、努力が実って勝つとうれしいシンプルなものです。ですが試合中のあるひとつの決定的な瞬間で勝敗が決まり、そのことによって選手ひとりの人生さえも変えてしまう、わくわくするものでもあります。僕はオリンピックの夢は諦めることになってしまいましたが、開発したシューズで活躍する選手を見ると自分のことのようにうれしいですね。いまの夢はオリンピックで金メダルを取るトップアスリートに選んでもらえるようなシューズをつくること。そんな瞬間に立ち会えるようこれからも妥協せずに開発していきたいですね」

GEL-SOLUTION SPEED FF OC
商品名:GEL-SOLUTION SPEED FF OC(6月1日発売予定)

石川が開発に携わったテニスのオムニクレーコート用シューズ。こだわりのポイントはソール。圧力のかかり方によってソールのピポットがスパイクの「止め」の役割を果たしたり、滑りをサポートしてくれたりと、プレーヤーの「動きたい」に的確に応えてくれる、技術の詰まった一足。

SOLUTION SPEED FF AWC OC