冬のランニングは「走りたいけど、寒くて外へ出るのが億劫」とモチベーションが上がらない人も多いのではないでしょうか?
でも、実は冬はランニングに絶好のシーズン。そこでアシックスランニングクラブの小谷浩コーチと、ランニングシューズ担当の鈴木利奈、アパレルイクイップメント担当の島田亜生子が、寒さに負けずに走るためのアイテムをご紹介します。

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左から、シューズ担当の鈴木、アパレルイクイップメント担当の島田、小谷コーチ。

冬ランはモチベーションが上がりにくい一方でメリットがたくさん

――冬は寒くて、どうしても外に出るのが面倒になりがちです。

小谷 そういう方は多いですね。でも冬のランニングにはとてもメリットが多いんです。まず気温が低いので、夏に比べて長い時間や距離を走りやすい。ロングランには絶好の季節です。また、ダイエットにも向いています。夏のランニングで体重が落ちる要因のほとんどは汗なんですね。ところが冬は体を温めようと脂肪を燃焼させるので、ダイエット効果が高い。ランニングは全身の血流が良くなるので、女性に多い冷え症の改善にもおすすめです。

――色々とメリットがあるんですね。

小谷 冬はランニングの楽しみも多いと思います。年末の走り納めや初詣ランで神社巡りをする人もいますし、ナイトランであればイルミネーションがきれいな季節なので、ライトアップされている場所を走るのもおすすめです。また、ランニング後のお酒やスイーツを楽しみにしている人もいると思いますが、長く走ることができるので、気兼ねなく好きなものを食べたり、飲んだりできます。走る前は億劫ですが、走り始めてしまえばとても気持ちのいい季節なんです。

冬ランの前は念入りなウオーミングアップを

――そう考えると冬のランニングはいいことばかりですね。

小谷 ただ、注意してほしいこともあります。まず冬は寒くて筋肉が固まっているので、いきなり夏と同じように走り始めると、怪我をする可能性があります。夏よりもウオーミングアップやクールダウンは念入りに行いましょう。また長く走れてしまうので、練習のしすぎにも注意したいですね。それと空気が乾燥しているので、汗がすぐに乾いてしまって、自分が汗をかいていることに気づかず、給水が疎かになりがちです。夏以上に意識して給水をしないと、脱水になる可能性があるので、喉が乾く前にこまめに水を飲むようにしましょう。

――ランニング前のウオームアップはどれぐらいしたらいいでしょう?

小谷 家の中でストレッチをしてから走りに行ったり、初心者の方なら最初の5~10分はウォーキングに、中上級者の方なら10〜15分はジョグをしてから本格的に走るといいでしょう。またウエアや小物で寒さ対策も万全にしておきましょう。

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冬ランのメリット
・ロングランを行いやすい
・脂肪が燃焼しやすい
・冷え症の改善が期待できる
・初詣ランやイルミネーションなどでモチベーションが上がりやすい

冬ランの注意
・筋肉が温まるまでウオームアップは念入りに
・汗をかいていないと思っても、給水はこまめにとる

 

冬ラン防寒、初心者は保温重視・中上級者は防風機能重視を

――冬のランニングでは、どのような防寒対策をすれば良いでしょう?

小谷 まず、気温だけでなく、風も体温を奪います。ゆっくりと走る初心者の方は保温重視で、中上級者の方は暖かすぎると汗冷えする可能性があるので、防風機能があるものを選んでいただくと、冷えにくいですね。

島田 走っているときは前から風を受けるので、ランニングジャケットは前身頃に防寒性や防風性のある素材を使ったウエアがおすすめです。例えばこちらのジャケットは胸の部分が中わたで、前身頃の下部分、後身頃や袖部分は3層構造の防風素材になっていて、裏起毛なので防寒性が高く、初心者の方におすすめです。

ランニングジャケット
ランニングジャケット

小谷 ランニング用のアウターを選ぶことも大切です。先日、試しに普通のダウンベストで走ってみたのですが、暖かすぎて、後半すごく汗冷えをして寒くなってしまったんです。ランニング用のウエアならそういう心配も少ないです。

――ジャケットのインナーには何をきたらいいでしょう?

小谷 通年用の長袖Tシャツもありますが、真冬はやはり冬用の長袖がおすすめです。

島田 ウール混のTシャツは保温性と通気性を兼ね備えながら、薄手なのでインナーに向いています。

ウール混のTシャツ

小谷 例えばロングランであれば、最初と後半は寒いので中わたのジャケットを着て、暑くなったらジャケットは脱いで、長袖Tシャツだけで走ってもいいですね。またジャケットを着ると汗をかき過ぎてしまう方は、薄手のジャケットにしたり、厚手の長袖Tシャツだけで走るのもいいでしょう。

島田 フード付きのこのウエアは、裏起毛なのですが、前と後ろで使っている素材が少し違っていて。前は保温性を高めていますが、後ろはメッシュ調になっていて通気性があるので、ムレにくい構造になっています。またファスナーを長めに取っているので、暑くなったらファスナーを開けるなど、温度調整もしやすいアイテムです。

フード付きのウエア

防寒対策のポイントは「首」

小谷 あと「首」と名前のつく部分を露出しないのが防寒対策のポイントです。

島田 1つ目は「首」ですね。面白い商品だと、フェイスゲーターがついた長袖のTシャツがあります。コロナ禍のランニングに配慮して、フェイスゲーターと汗などを拭う袖の部分に抗ウイルス加工素材(後加工素材)を使っています。フェイスゲーターは後ろ襟についたボタンで取り外しできるようになっているので、他のウエアとコーディネートすることもできますし、暑くなったら首から外して後ろに垂らすこともできます。

抗ウイルス加工フェイスゲーター付き長袖シャツ
抗ウイルス加工フェイスゲーター付き長袖シャツ

小谷 フェイスゲーターで寒い場合はネックウオーマーがおすすめですね。トップアスリートにも愛用者が多いです。

島田 そうですね。こちらの裏起毛のネックウオーマーは後側で調節できるアジャスターがついているので、しっかりと防寒できますし、やわらかな素材なので、暑くなったらアジャスターを外せば衣服内温度調整も可能です。また再帰反射材がついているので、夜ランにも考慮された設計になっています。

ネックウォーマー

2つ目は「手首」。まず、アシックスの秋冬の長袖Tシャツは、親指を通すサムホールがついている商品が多いので、手首までガードできます。

長袖Tシャツの袖の部分

小谷 腕時計の部分にスリットが入ったTシャツも便利ですよね。最近は心拍計がついている時計も多いけど、服の上から時計をすると計測ができない。だけど長袖だと袖が時計に引っかかってしまうという不具合も起きにくいです。それと手袋。普通の手袋をしている人もいますが、薄手でも保温性がある、ランニング用のグローブがおすすめです。

島田 グローブにもいくつかバリエーションがあります。保温性を重視した裏起毛のものや、風を受けやすい手の甲には防風素材、汗をかきやすい手の平には、吸汗性と速乾性のあるポーラテック素材を使用したものなどを用意しています。

ランニングウオームグローブ
ランニングウオームグローブ

小谷 最後は「足首」です。パンツと靴下の間に隙間を開けない方がいいので、ハイソックスがおすすめです。

島田 シューズと足の隙間を埋めるパットが入ったものや、吸水性の良い和紙素材のものなど、ハイソックスにも色々なバリエーションがあるので、ぜひ色々チェックしてみてほしいですね。また、ふくらはぎ部分に着圧機能があるものなら、足の負担軽減に役立ちます。

プロパッドロングサポートソックス
プロパッドロングサポートソックス

――ボトムはどのようなものを選んだらいいでしょう?

島田 タイツ派でしたら、前身頃は3層構造の防風素材になっていて、ひざから下と後身頃が裏起毛のアイテムが保温性があります。また初心者の方にはロングパンツもおすすめです。風を通しにくい素材になっているだけでなく、ファスナーやポケットから雨や風が入りにくいように、布で覆われているなど、細かい部分まで防寒性を意識したものになっています。

ボトム

ポイントは上下で暖かさを変えること

小谷 あと意外と冷えるのが耳。キンキンに冷えて痛いぐらいの時があるので、イヤーウオーマーがあると便利です。

島田 ヘアバンドタイプは、薄手でフィット感もあるので、走っていて邪魔に感じることが少ないと思います。

イヤーキャップ(LITE-SHOW)

小谷 コーディネートの考え方として、上下で暖かさを変えるのもおすすめです。上半身を暖かくしたらボトムは薄手に、上半身を薄手にするなら、ボトムは厚手にすると、暑くなり過ぎずにすみます。色々なコーディネートを試してみると楽しいですよ。

暗くなってからのランにも注意を

小谷 またシューズに季節は関係ないのですが、冬は陽が落ちるのが早いので、再帰反射材が付いている靴を選ぶと暗くなってからのランに向いています。

鈴木 アシックスでは各モデルにライトショーという再帰反射を用いたアイテムを用意しています。シューレースのドット部分、かかとのヒールテープ、あとはサイドのマークの縁取りに再帰反射の素材が使われていて、前・横・後ろ、さまざまな方向から視認性を高めるようになっています。またアッパーも通常のものより少し厚めで、風を通しにくい仕様になっています。

小谷 新しいモデルを取り入れるのも、ランニングのモチベーションを上げるのに役立ちますよね。

鈴木 そうですね。12月上旬に販売された「GT-2000 11」は、初心者からサブ5を目指すランナーにおすすめの新作です。非常に軽く、クッション性のあるFF BLASTという素材を使っていて、前モデルに比べて履き心地のやわらかさが向上しました。また中足部から内側にかけて素材を硬くした、LITETRUSSという構造を採用しているので、シューズのねじれや内側への倒れを抑制してくれます。履き心地はやわらかいけれど、安定した走りができるようになっているんです。また、このモデルにはアッパーにゴアテックスを採用したバージョンもあって、こちらは防水、透湿機能があるので、雨の日のランニングにも向いています。

GT-2000 11 GTX
GT-2000 11 GTX

小谷 通常のアッパーよりも風を通さないので、足が寒いという人はこういうシューズを活用するのもいいですね。冬のランニングは、これから走りたいと思っている人にも最適の季節なので、こういったアイテムで気持ちを高めていただいて、ぜひ楽しく走ってください。