運動後の食事の重要性

運動だけでなく食事を含めて体づくり。そんな運動のお供に取り入れてほしい一皿を、料理家が栄養バランスを考えてご提案するのが「運動ごはん」です。

 

第8,9回目の村野明子さんに続いてレシピを紹介するのは、荻野伸也さん。東京・池尻で「OGINO」のオーナーシェフとして腕をふるい、スローフードをファーストフード感覚で提供する「ターブルオギノ」を都内近郊に数店舗経営。北海道にて欧風惣菜店「ヴィヴル・アンサンブル」もプロデュースしています。そしてその傍ら、トライアスロンの大会に出場したり、運動をテーマにしたレシピ本を出版したりと、アスリートシェフとしても話題になっている料理人です。

荻野伸也さん

荻野さんが運動を始めたきっかけは、お店のお客様からトライアスロンに誘われたこと。最初は趣味で始めたものの気づけば大会に出場する程にのめり込み、ほかにもサーフィンや登山、ロッククライミングなど幅広いスポーツをしながら料理人として活躍しています。

 

OGINOには、マラソン大会に出場した当日に食事に来るお客様をはじめ、運動を生活に取り入れている方が多いのだとか。そんなお店の特徴と自身の経験を踏まえたうえで、荻野さんは運動後の食事の重要性を話してくれました。

 

「シューズなどのギア選びと同じくらいに運動後の食事も大切です。筋肉は運動で刺激を与えた後に大きくなるので、僕はその時にカラダにいいものを食べることで良質な筋肉ができると考えています。自分自身、運動後の食事によって体がどう変わっていくかを実験してきました。ヴィーガンなども取り入れましたが、一番パフォーマンスが高かった食材が鶏胸肉です。ヘルシーで高タンパク、しかも手に入りやすいですし、いろいろ試したうえで鶏胸肉の良さを再発見したんです」

鶏胸肉のしゃぶしゃぶサラダの素材

「今回紹介する鶏胸肉のしゃぶしゃぶサラダは食べ応えのあるメニューです。体を絞りたい方は炭水化物の摂取を抑えるためにお米を控えたりしますが、タンパク質を主体としながら、付け合わせの野菜にじゃがいもなどビタミンCやビタミンB群がふくまれている素材を入れることで疲労回復を高めます」

鶏胸肉だからこそ出せる食感

<レシピ>
鶏胸肉のしゃぶしゃぶサラダ

 

【材料】 2人分
鶏胸肉 60g
塩 適量
片栗粉 大さじ1
じゃがいも 1個 ※このときはアンデスレッドという品種を使用
モロッコインゲン 5本
トマト 1個
ミックスベビーリーフ 適量
ゆで卵 1個
アンチョビ 3枚
ポン酢 50cc
レモン果汁 1/2個

 

【つくり方】
1.じゃがいもとモロッコインゲンは下ゆでして食べやすいサイズに切る。
2.鶏胸肉を3mmほどの厚さにそぎ切りし、塩をまぶして下味をつける。
3.鍋にお湯を沸かす。
4.下味をつけた鶏胸肉に、片栗粉を入れ混ぜ合わせる。
5.沸騰したお湯に鶏胸肉を入れる。
6.再度お湯が沸騰したら孔の開いたおたまで鶏胸肉をすくい、氷水で粗熱をとる。
7.器にベビーリーフを敷き、その上にカットしたトマト、じゃがいも、モロッコインゲンを盛り付ける。
8.鶏胸肉の粗熱が取れたらペーパータオルで水分を取り、7の器に盛り付ける。
9.ゆで卵とアンチョビを散らし、ポン酢とレモン果汁をかける。

 

「ポイントは鶏胸肉をそぎ切りして、片栗粉を満遍なくあえること。鶏胸肉はパサつきやすいですが、この一手間を加えるだけでふわっとした食感に仕上がり、すごく美味しくなりますよ。野菜は今回使用したもの以外にお好みでもいいですし、アンチョビはシーチキンやオイルサーディンにアレンジしてもOKです。お肉の味が淡白なので、旨味の要素が入るとアクセントになります。ゆで卵は手で潰すと、その粗さが盛り付けを引き立てます」

 

鶏胸肉
片栗粉を満遍なくあえる
鶏胸肉のしゃぶしゃぶサラダ

「元々フランス料理では、鶏肉はもも肉よりも胸肉の方がランクが上なんです。最高という意味のフランス語がつくくらい、フランスでは胸肉を好んで食べます。もも肉は筋や脂が多いので、今回のような食感は出せないんですね。日本ではなかなか使いづらい印象がある胸肉ですが、もっと他に調理法があるということを伝えていきたいですね」

鶏胸肉のしゃぶしゃぶサラダ

荻野伸也

東京・池尻の人気フランス料理店「OGINO」オーナーシェフ。フレンチ惣菜店「ターブルオギノ」も経営。35歳を過ぎてから本格的にスポーツに取り組み、トライアスロンの大会に出場するまでに。神奈川県藤沢市の自宅から東京・池尻まで練習と称して自転車通勤することもあるアスリートシェフ。著作に『アスリートシェフの美筋レシピ』(柴田書店)、『アスリートシェフのチキンブレストレシピ』(柴田書店)、『レストランOGINOの果物料理』(誠文堂新光社)などがある。

 

Text:Kaori Takayama
Photo:Keta Tamamura
Edit:Shota Kato