運動は私たちの体に刺激を与えて、シェイプアップや健康維持など、さまざまな良い効果をもたらしてくれます。それと同じくらいに「食事」も体づくりに大切な要素です。スポーツで汗を流しては栄養を摂る。シンプルなサイクルを繰り返して、私たちの体はつくられています。運動だけではなく食事を含めて体づくり。
そんな運動とともに取り入れてほしいひと皿を、料理家が栄養バランスを考えてご提案。第1回目に登場するのは、素材の味を生かした料理を通じて、質の高い生活を提案する渡辺有子さん。効率よく栄養補給でき、かつ簡単に再現できる、夏バテ対策の定番料理をレクチャーします。
渡辺有子さんが振る舞う夏の定番料理
うだる暑さの夏は食欲が落ちてしまいがち。特に運動後にバテてしまうと食事を疎かにしてしまうこともあるでしょう。しかし、しっかりと食事を摂らなければ、運動とあわせて効率的な体づくりはできません。今回、渡辺さんがつくるのは、そんな夏の運動を楽しく乗り切るための定番料理。「オクラのねばねばどんぶり」です。

渡辺さんは「オクラのねばねばどんぶり」を夏バテしそうになると必ずつくるのだとか。ひと皿でも栄養価が高く、のどごしが良く食べやすい。オクラといえば“粘り”ですが、「オクラのねばねばどんぶり」では、オクラを箸で持ち上げられるくらい、納豆のような粘りが出るまでたたきます。


すると、他の食材に絡みやすくなり、粘りとサラサラの両方の食感が生まれます。炊きたてごはんと相性がよいのは言わずもがな、梅ぼしと出汁じょうゆをかけることでさらりと食べやすくなるのです。
「オクラが持っている粘りを引き出すということがポイントですね。オクラは中途半端に刻むとタネがあるので、食感があまり良くないと感じてしまうかもしれません。でも、ここまでオクラを叩けば、まったく気にならないはず。アツアツのごはんにのせるだけでも美味しいんですよ」
運動と食事はセットにしてこそ健康的
素材の味を生かしたシンプルな料理が人気の渡辺さん。意外な一面かもしれないが、実は学生時代はスポーツまっしぐらだったそうです。
「もともと運動をずっとやっていたんですよ。学生の頃は中高バスケ部のキャプテンで、高校と大学では海で遠泳のコーチをやっていました。体を動かすことしかやっていなかったので、両親も私が運動の仕事をすると思っていたはずです。なんで料理なの?って親によく言われましたから(笑)」

現在、渡辺さんはパーソナルトレーナーによるトレーニングを週1回受けて体を動かしています。学生時代のように運動漬けの日々ではないけれども、定期的に体を動かすことで体の姿勢を正したり精神状態をリラックスさせたりと、学生時代とは異なる運動の心地よさを実感しています。
「トレーニングを続けて1年以上になりますが、やっぱり運動はいいですね。料理は段取りが大切なので、頭を使ったり反射神経を使ったり、運動と共通することを感じます。トレーニングは朝か夕方に1時間半。プログラムはスクワットを中心に60分、後半の30分は入念にストレッチという流れです」


いい汗をかいた後は、栄養バランスのとれた美味しいものを食べてほしい。運動と料理が習慣化されると、生活にリズムが生まれる。そんな渡辺さんからスポーツ愛好家へのメッセージが、この「オクラのねばねばどんぶり」に込められています。渡辺さん自身は普段の食生活について、どんなことをケアしているのでしょうか。
「朝食はヨーグルトとナッツと果物と卵料理。お昼は炭水化物、夜は肉や魚といった動物性タンパク質中心という感じです。私、炭水化物が大好きなんですよ。それこそ三食が炭水化物でもいいくらいに(笑)。運動後の食事はタンパク質を摂ることを意識していますね。野菜と肉をバランスよく。運動と食事はセットにしてこそ健康的。食べることも体づくりにつながるということを含めて提案したいですね」

<レシピ>
オクラのねばねばどんぶり 2人分
【材料】
オクラ 16本
豚薄切り(ロース)120〜140g
梅干し 大きめ2個
かつおだし 60ml
しょうゆ 小さじ2
おかか 6g
ごはん 茶碗2杯分
【つくり方】
1. オクラは塩でかるくこすり、水で洗う。鍋に湯を沸かし、3〜4分茹でる。ざるにあげ、冷ます。
2. 鍋に湯を沸かし、弱火にして豚肉をさっと泳がせるように湯通しする。ぬるま湯を入れたボウルにとる。水気をきる。
3. 1のオクラのヘタを切り、包丁で刻んでから粘りが出て、ひとまとまりになるまで包丁でたたく。梅干しの種を取り、オクラに加えてさらにたたく。
4. 炊きたてのごはんにおかかを混ぜ、2と3をのせ、かつおだしとしょうゆを合わせたものを適量、まわしかける。
「オクラをたたく工程は一緒ですが、お出汁でゼリーをつくって、それをオクラの和えものの上からかけて前菜にするのもおすすめです。あとは夏の冷しゃぶサラダもいいですね。ごはんではなく素麺などにも合いますよ」











渡辺有子(ワタナベユウコ)
料理家。素材の味を生かしたシンプルな料理が人気。季節を大切にしたていねいな暮らしぶりやセンスある着こなし、器づかいでも注目を集める。アトリエ、「FOOD FOR THOUGHT」で料理教室やイベントなどを開催。2017年4月には、オリジナルの瓶詰めや器などを扱うアトリエと同名のセレクトショップをオープン。著書に『サンドイッチの時間』(マガジンハウス)、『手みやげ 書きとめ帖』(主婦と生活社)などがある。
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[運動ごはん連載]
TEXT : Shota Kato PHOTO : Arata Kato