「暖かくなってきたし、ちょっと走ってみようかな?」
そんなふうにしてランニングを始める時、どんなウエアを手にしましたか?私は学生時代の学園祭のTシャツに部屋着のスウェットパンツにスニーカーでした。当たり前ながら生地が擦れて肌が痛くなるわ、汗を吸いこんで重いわ、冷えるわで大変な思いをしたのを今でも覚えています。ゆるっとランニングを始めて10年、今となってはこんな失敗談も笑い飛ばせるほどですが、ランニングウエアはシューズと同じくらいランナーにとってとても大切なものです。
もちろん、見た目のかっこよさも大事ですが、最新のウエアには機能もたくさん備わっています。暖かくなって走りやすく、ランニングがはかどる春夏シーズン、いまから買うならどんなものが良い?おすすめのウエアと選び方のコツを紹介します。
<目次>
- ランニングウエア選びの基本
- 春夏にランニングをするときのウエア選びのコツ
- ランニング用ウエアをおしゃれに着こなすコツ
■教えてくれた人
池田美穂さん
アシックスランニングクラブコーチ。東京マラソン・ニューヨークシティマラソンといった市民マラソンから、大阪国際女子マラソンなど国際レースに出場。アシックス直営店や全国各地で、市民ランナーへのランニング指導を行っている。

ランニングウエア選びの基本
ランニングを始めたばかりのころは、手持ちの「見た目がスポーティー」な服を代用している人が私を含めほとんどなのではないかと思うのですが、シューズと同じく、ランニングにはランニング用のウエアが良いわけで。そもそもどんなものがランニングウエアに適しているのか、今回もアシックスランニングクラブコーチの池田美穂さんに教えてもらいました。
――私、最初はパジャマみたいな格好で走っていました(笑)。たくさんあるウエアのなかで、最低限の条件はありますか?
吸汗速乾の素材を選ぶのは大前提です。ランニングは汗をかくスポーツなので、ウエアの素材が体温調節に影響します。また、ストレッチ機能のある素材は動きやすさにも優れていて、走る動作を邪魔しないので快適な走りができます。
――なるほど。ちなみに、吸汗速乾素材は大前提ということなのですが、綿素材はなぜダメなんでしょうか。
コットンは、汗を吸って重くなり、乾きにくい特徴があります。肌にはりついて、汗冷えを起こす恐れもあります。ポリエステルなどの化学繊維の素材は吸汗速乾性に優れていて、生地そのものも軽くてふわりとしていて着心地も良いです。
――女性はアンダーウエアも大切ですよね。
女性ランナーは、スポーツブラは必ず用意してほしいアイテムです。擦れ、揺れを防ぎます。
――ボトムスは、ランニングタイツとランニングパンツの組み合わせが一般的なイメージですが、何か選ぶポイントはありますか?
ランニングタイツは、もたつかず、足さばきが良く動きを邪魔しません。さらに、コアバランス機能のあるようなサポートタイツは、膝や腰への負担を減らし、筋肉の疲労を軽減してくれる役割もあります。特に、初心者は疲れてくると腰(骨盤)が落ちて前腿などに負担がかかるフォームになりやすいのですが、サポートタイツを履くことで骨盤の位置が安定し、正しいフォームに導いてくれます。また、前腿の揺れを抑えることによって、膝がぶれて膝周りに負担がかかるのを防ぎます。
ちなみに、アシックスでは、「カスタムフィット」というタイツのオーダーサービスもあります。3Dスキャンでサイズを測って自分専用のタイツを作ることができます。ランニングを始めたばかりの頃は体型も変わりやすいので、少し走ることに慣れてきた頃におすすめです。そのほか、体型が気になる人は、ランニング用の薄くて軽い速乾性のあるロングパンツも選択肢に入れても良いかもしれません。
――走れる軽いランニング用ロングパンツは意外な選択肢な気がします。それならランニング終わりで街を歩いたり電車に乗ったりしても違和感がなさそうです。そのほかオススメのアイテムはありますか?
靴下もぜひランニング用のものを選んでほしいですね。靴擦れや蒸れ、マメのトラブルはランナーのよくあるトラブルなのですが、靴下選びで解決することも多いです。フィットして乾きやすいランニングソックスは、中足部のアーチを抑えるようなタイプのものや、靴下そのものにクッションが付いているものもあります。
そのほか、夏ならばサングラスやキャップも必需品です。飲み物が入るウエストポーチもあればばっちりですね。
走ってそのまま街も歩ける。軽いランニング用ロングパンツはこちら
春夏にランニングをするときのウエア選びのコツ
朝晩は肌寒いけど、走ればすぐに暑くなる。春は意外とウエア選びが難しい季節でもあります。どんなランニングウエアを選ぶのが良いのでか、夏直前のウエアリングとあわせて聞いてみました。
――まだ朝夜は冷え込むこともありますが、春夏のウエアの条件はなんでしょうか。羽織るジャケットも必要ですか?
もうそろそろTシャツでも良いと思うんです。でも肌寒さが気になるなら、長袖のTシャツがおすすめです。

――風を防ぐジャケットではなくて、長袖ですか?
気温や湿度にもよりますが、少し肌寒いくらいの季節であれば、走っているとジャケットでは暑いと思います。蒸れにくいジャケットならば走り始めに着るのも良いとは思うのですが、走れば熱くなって汗をかきますから、速乾性の高い長袖Tシャツのほうが意外と便利なんですよ。
――なるほど、それは初心者が気付かないポイントかもしれないですね。それから、気になるのが日焼け。アームカバーやネックウォーマーなどの小物で日焼け対策は必要ですか?
日焼けをしたくないあまりに、全身の肌を覆ってしまう人がいますが、真夏はおすすめできませんね。夏場は熱中症になる恐れがあるので注意が必要です。アームウォーマーやネックウォーマーは寒さ対策としては良いですが、真夏の暑い日の日焼け対策としては、肌を覆うよりも日焼け止めでしっかりガードしましょう。どうしても日焼けしたくなければ、早朝や夜に走ることをおすすめします。
――それもひとつの対策ですね。夏になって気温が上がると、さらにウエアも変わってきますか。
最近では熱を外に逃がしやすいようにメッシュになっているものや、冷感素材のウエアも出てきているので、こういうウエアを選ぶと暑さ対策にもなると思います。


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ウエア選びのコツ3か条
- ランニング専用のものを選んで快適に
綿素材は避け、化繊で吸汗速乾のものを選ぼう。メッシュ素材や夏向きのひんやりする機能が付いたものもGOOD! - 夏は熱中症に気をつけて!間違った対策に注意
春夏のランニングで注意したいのが熱中症。むやみに肌を覆うよりも体温調節を重視しよう。身体に熱がこもるのを防ぐようなウエア選びをしよう。 - 季節(気温)に合わせたコーディネートを
普段着とランニングウエアでは同じ気温でも選び方が異なります。汗をかいて熱くなることを想定して、着込みすぎないようにしよう。
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ランニング用ウエアをおしゃれに着こなすコツ
せっかく着るならおしゃれなウエアで街中を走りたい!ということで、最後にランニングウエアをおしゃれに着こなすコツも聞いてみました。
――ランニングウエアもやっぱりオシャレに着こなしたい!という人が多いと思います。最近のトレンドとコーディネートのコツを教えてください!
最近はもっぱらモノトーンや少しくすんだカラーがトレンドです。メンズは、ブラック、カーキ、グレーなど日常に溶け込むようなカラーとデザインで街でも馴染むものが人気です。

女性も同じくモノトーンやくすんだカラーが人気なのですが、例えばペールトーンや元気が出るようなビタミンカラーなど、ランニングウエアだからこそ思い切って明るい色を選んでみるのも良いと思います。

また、女性はお腹やヒップ周りが気になる人もいると思います。トレンドのタイツのみのスタイルにチャレンジするなら、お尻が隠れるくらいの長めトップスを合わせると良いでしょう。色使いのポイントは同系色で合わせること。柄モノやあれこれ色をたくさん使うよりも、グッと絞ることですっきりとまとまったコーディネートになります。
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ランニングウエアコーディネートのコツ
- 日常にも使えるモノトーンがトレンド
- 元気なビタミンカラーや思い切った明るい色を差し色で使っても◎
- 同系色で合わせると統一感が出てすっきりした印象に
- 身体のラインが気になる人は長めのトップスなどで調整
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――新しいウエアは気分も上がりますよね!
そうですね。モチベーション維持には見た目も大事です。お店には迷ってしまうほど色んなデザインがあります。着ているだけで嬉しくて走り出したくなる、お気に入りを見つけ出してください。
これからの季節におすすめのランニングウエアはこちら
TEXT:Emma Nakajima
PHOTO:Takuya Ikawa